会えば彼女に触れたくなる、だがその先は地獄… アラフィフ夫が出した結論をどう理解すべきか

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 男女問題を30年近く取材し『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があるライターの亀山早苗氏は、最近“性的関係を持たないセカンドパートナー”がいるという話をよく聞くという。

 配偶者以外に心を許した人がいても、それが「プラトニックな関係であること」が重要らしい。男女問わず耳にはするが、特に男性側にその意識が強いようだとも亀山氏はいう。

 マッチングアプリや「既婚者合コン」などが浸透し、不倫関係が築きやすい時代である。それゆえに不倫の“亜種”のような形が現れ始めているのだろうか。

 今回、取材に応じた男性もそんな関係を継続中のひとりだ。

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「体の関係を持ったら、即不倫と断罪され、妻から離婚を迫られる可能性が高いわけですよ。でも妻とは正直言って、もう恋愛感情を抱ける関係にはない。だから恋はしたい、恋人はほしい。もっと言えば、心の交流ができる人と人生について語り合ったり、ときにはバカ話をして笑い合ったりしたい。潜在意識でそういう人を求めていたのかもしれません」

 坂野翔太郎さん(46歳・仮名=以下同)は少しだけ苦笑いのような表情を浮かべながらそう言った。彼には現在、そういうセカンドパートナーがいる。ときに性欲に負けそうになりながらも、彼女との関係を続けるために、あえてプラトニックでいようと心しているという。

 翔太郎さんが結婚したのは30歳のときだった。相手は、友人に紹介されて仲間に入ったグループで出会った圭子さんだ。

「圭子は3歳年下でしたが、3人きょうだいの長女という育ちもあるのか、しっかりしていましたね。グループづきあいだったけど、帰宅方向が一緒だったので、あるとき途中下車して飲もうと誘ったんです。飲みながらいろいろ話したけど、『子どものころから計画的に生きてきた』と言うのでびっくりした記憶があります」

 圭子さんは第一希望の高校、大学を出て、望み通りの仕事についていた。人生、思い通りにならないことはないと信じているようだった。

「僕なんか高校も大学も希望通りじゃなかったし、仕事もそう。思い通りにはいかない人生の中で、どうやって楽しみを見つけるかがテーマだよと言ったら、彼女は少し考えて『私もきっとこれからは思い通りにはいかないと思う。その覚悟をしておかなければと考えていたところです』って。頭のいい人だなと思いましたね」

 実際につきあってみると、周りへの気配りに秀でた「よくできた人」だった。週末の午後を初めて一緒に過ごしたとき、彼は「ふたりでただまったりして、DVDを観たりしながらだらだらしていたい」と言った。彼女は笑ってつきあってくれたが、その後、「私はやっぱり何もしないことで充足できない。一緒にスポーツするとか外に出かけるとか、もう少し行動的に過ごしたい」とはっきり言ったそうだ。

「同意するかどうかは別として、そうやって自分の意見をはっきり言うところがいいなと思ったんです。それで、こんな僕でよければ結婚してください、と。なんとなくふたりで会うようになってから2ヶ月くらいしかたってなかった」

 結婚するならこの人だと閃いたのだ。その裏には、「家庭を任せられる」という思いもあった。彼自身、家庭は実質的に妻が主導権を握るもの、握ってほしいと考えていた。妻が優秀であるなら、夫は黙って従っていればいい。本気でそう思っていた。

「実は僕が育った家庭がそんな感じだったんですよ。オヤジはおとなしい人で、ほとんどおふくろの言いなり。おふくろは段取り好きで賢いところもあるんだけど、その段取りがどこか甘くてね。それでもオヤジはおふくろに全権を任せていた。うちはいつも、ほんわか穏やかな雰囲気でした。圭子はおふくろと比べるとシャープで優秀だから、僕が育った家庭ほどのんびりとはいかないだろうけど、いい家庭になりそうな気がしていました」

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