日本中に蔓延する“SDGs疲れ”、美しい地球のための「努力」がもたらす「不都合な真実」

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愛する地球のために

 これだったら脱炭素化のために莫大な設備投資をする余力がない一般的な事業者も協力できそうですが、結局「2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロ」については技術者頼りになるわけですから、エネルギー会社の皆様に頑張ってもらわなくてはならない。正直、私がこれらの会社の従業員や技術者だったら「やめてくれー! 無茶な目標立てないでくれー!」とSDGsの理念を提唱した人や、各種国際会議での決定に文句を言いたくなることでしょう。

 それでもその合意に向けて日本は突っ走るわけですからやるしかない。2020年からプラスチックゴミ削減のためにレジ袋有料化が開始したり、一時期はコンビニ弁当・総菜用のプラスチックスプーンも有料化が検討されました。そういった不便さもSDGsのため、我々消費者は協力してきた。あぁ、愛する地球のためにはこうした地道な努力と我慢はある程度は受け入れましょう。

 でもさ、それなら路上に捨てられた大量の不織布マスク、なんとかしてくれ。不織布マスクなんてプラスチックだろうよ。あと、コロナ騒動終了後のアクリル板とビニールカーテン。アレの使い道って何になるんですか? 完全なるプラスチック製品でしかも全国規模だと膨大な量の産業廃棄物になる。

 こういったところにも私はSDGsの基本的理念には賛同しつつ、心のどこかに欺瞞を感じてしまうのです。一方、実現のために努力する企業の方々に対しては敬意の念しか持てません。そこから新たなるイノベーションが生まれるかもしれないのですから。それが達成された時にSDGsは、「あの時の判断は正しかった」となるのでしょう。2050年まで待ちましょう。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。最新刊に『捨て去る技術  40代からのセミリタイア 』(インターナショナル新書)。

デイリー新潮編集部

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