消された「ルフィ」のスマホデータはどこまで復元できるか 捜査員が頼りにする“秘密兵器”

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「ルフィ」を名乗り、50件以上の強盗事件に関与したとしてフィリピンから送還後に逮捕された渡辺優樹(38)、小島智信(45)、今村磨人(38)、藤田聖也(38)ら4人の容疑者。捜査のカギとなるのは、4人がフィリピンの入管施設に収容された際に押収された13台のスマートフォンと2台のタブレットの解析だという。実行犯へ指示したデータが残っていれば、事件解明へ向けて大きく前進する。

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 渡辺容疑者ら4人は2021年夏以降、フィリピンの入管施設で強盗の実行犯にスマホで指示を送っていたという。通信アプリは、“テレグラム”が使われた。2013年にロシアの技術者が開発したアプリで、世界で最も安全性が高いと言われている。

「警視庁は現在、押収した13台のスマホのデータを分析する、デジタルフォレンジック(コンピュータやスマホなどに残されたデータを回集して分析調査すること)を行っている最中です」

 と解説するのは、ITジャーナリストの三上洋氏。

「警視庁では十数年前から、データを収集し解析する専門スタッフを養成していました」

イスラエルのUFED

 ルフィたちが使ったテレグラムには、他の通信アプリにはない特殊な機能がある。

「テレグラムには、シークレットチャットという機能があります。メッセージを暗号化することができるので、解読されにくい。さらに、メッセージを相手が読んだ後、数秒から1時間、最長1週間で自動消去を設定することができます」

 自動的にデータを消せるので、テレグラムは犯罪者やスパイ、公安警察官も利用しているという。

「一度自動消去されたメッセージは、これまで復元できないと言われていました。ところが最近、海外の機器を使って復元が可能となったのです」

 果たして、どんな機器なのか。

「イスラエルのUFED(ユーフェド・データ抽出機器)です。警視庁は、UFEDを使っていることを公式に発表していませんが、これを使えば、テレグラムで自動消去されたメッセージを復元できるそうです」

 一般にはあまり知られていないが、イスラエルはサイバーセキュリティの分野で世界をリードしている。4年前には、日本の捜査当局がイスラエルの企業に、事件に使われた携帯のロック解除を依頼したこともあった。

 UFEDはアップルのiPhone、GoogleのAndroid、サムスンのGalaxyなどの端末もデータを復元できるという。

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