“ペロペロ少年”の処分はどうなる? 少年の母が取材に語った「謝罪」と「息子の退学」

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一層厳しい世の中に

「またかという印象です」

 と述べるのは、ITジャーナリストの三上洋氏だ。

「こうした炎上動画は10年ほど前から出ています。当初はアルバイトの店員が店の食洗機や冷蔵庫に入ったりという画像をTwitterに投稿していた。それから5~6年経つと今度はInstagramやTikTokに動画を上げるようになった。自分のワル振りを自慢するためで、“バカッター”“バイトテロ”とも言われます」

 もちろんこうした動画は身内受けを狙い自らのSNSに投稿される。広く“バズりたい”わけではないが、

「それが友人から友人へ共有されるうちに、誰かが転載して世間に拡散されることになる。今回のケースもそうですが、最近は“暴露系”という、ネット上で起こる事件をまとめてアップするユーザーがいて、そこにそうした動画がタレコまれる。彼らが上げることによって爆発的に広がっていくんです」(同)

 するとそこに入り込んでくるのが“特定班”などと呼ばれる人種。動画内容やアカウント情報を手がかりに対象人物を特定し、個人情報を暴いて拡散するのだ。

 さらに本件では、あるYouTuberが少年の高校に突撃し、教師に「なぜ退学処分にしないのか」と詰め寄る動画を投稿する始末。

 炎上した人物に一層厳しい世の中になったわけである。

場合によっては不処分

 インターネットなどない時代は、この手のいたずらをしたとしてもきつくおきゅうを据えられたり、保護者が謝罪、弁償したりするくらいで済んでいたかもしれない。しかし、本件は動画が拡散しているだけに、被害は桁違いに広がった。

 スシローは当該店舗の醤油ボトルと湯飲みを全て入れ替え、洗浄し、近隣店舗も含めて食器や調味料を各テーブルから新設の置き場に移した。テーブルとレーンの間にアクリル板を設置する措置も進めている。ワイドショーで連日この件が報じられ、時価総額が一時約170億円も下落する事態となったのである。

 少年は慌てて1月31日に保護者と謝罪に赴いたが、時すでに遅し。スシローは警察に被害届を提出し、刑事、民事の両面から厳正に対処すると発表したのだ。

「器物損壊、威力業務妨害の二つの罪に該当する可能性があると考えられます」

 と少年の今後を解説するのは、飲食業界向け法務サービスを取り扱う法律事務所「フードロイヤーズ」代表弁護士の石崎冬貴氏だ。

「ただ、本件は少年法が適用され、家裁に送致されることになる。本人の反省の度合いや素行にもよりますが、保護観察処分、場合によっては不処分となることも考えられます」

 では、民事の方は? ワイドショーでは、アメリカなら億単位の請求の可能性も、と報じられたが、

「スシロー側は一連の対応にかかった費用を含め、かなり踏み込んだ額を請求すると思います」

 と自身でも飲食店を経営する石崎氏が続ける。

「湯飲みの消毒や醤油ボトルの入れ替えにかかった費用は認められるでしょう。ただ、売り上げの減少分や、設備投資分まで認定されるかは疑問です。売り上げが減ったとしても本件との因果関係は立証しづらく、アクリル板の設置なども、損害というより店の自衛の範疇(はんちゅう)と解釈されてしまいますからね。株価も日々変動するもので、下落が損害とされる可能性は更に低い。少年側が負う額は全体でもせいぜい数十万円に収まるのではないかと思います」

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