どうする韓国、中国が怖くて半導体封鎖に加われないのか 「ホワイト国」に再指定すれば日本も同罪

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韓国に目を光らせる米国

――そんな前科がある以上、韓国はまたやりそうですね。

鈴置:韓国には世界1位と2位のメモリー・メーカーがあり、それぞれ韓国に加え中国に大工場を持っている。対中禁輸品でも韓国本社が輸入し中国工場に回す、という手口を使えるのです。

 2022年秋にも「怪しげな動き」がありました。10月7日、米政府は米国企業に対し、先端半導体の製造装置の対中輸出を禁じました。

 ただ、韓国の2大メーカー―サムスン電子とSKハイニックスは1年間の適用猶予を受けました。中国工場の能力を増強中との理由です。聯合ニュースが「韓国半導体大手2社の中国工場 米が装置輸出規制強化を1年猶予」(2022年10月12日、日本語版)で報じました。

 韓国は1年間ですが「風穴」を開けた。この抜け道を利用して、米国が輸出を禁じる製造装置を中国に持ちこむことが可能になったのです。

――なぜ、米政府がそんなにワキの甘いことを……。

鈴置:当時、米政府は韓国の半導体、電気自動車、バッテリーメーカーに対米投資を要請していたので、譲歩したと見られます。でも、韓国の「横流し」には目を光らせ続けています。そもそも、日本製フッ化水素の横流しが表面化したのも「米政府が発見し、日本政府を使って韓国に改善させた」と見る関係者が多いのです。

「ホワイト国に戻す」と言い出した外務省

――ところが……。

鈴置:そうです。ところが、2023年に入って日本の外務省が「対韓輸出の管理を緩める」とリークし始めた(「半導体戦争で板挟みになる韓国 米国の圧迫と中国の嫌がらせ…頼みの綱は日本の輸出管理撤廃」参照)。こんなことをやれば、韓国に連座します。外務省の国会議員への説明は以下です。

・韓国政府は輸出の仕向け先をチェックする体制を整えた。それを受け、日本も一度は厳格化した韓国向け輸出管理を緩めようとした。
・しかるに韓国がWTOに日本を提訴したのでそのままになっている。今後、韓国が提訴を取り下げれば、日本も対韓輸出の管理を緩めるのが筋だ。

 米国が韓国の横流しに疑惑を持ち、その輸出先の監視を強化する時に日本が監視を緩めるというのですから「ピンボケも極まれり」です。まず、「韓国がチェック体制を整えた」は理由になりません。韓国政府が横流しする意図があれば、制度などいくら整えても関係ないのです。

 それに対韓輸出管理の強化は、横流しを防ぐのだけが目的ではありません。半導体封鎖網が典型ですが、韓国は今、米中どちらの陣営に入るか、あるいは中立を維持するか、で岐路に立っています。

 安倍晋三元首相が始めた対韓輸出管理の強化――フッ化水素など半導体関連3品目の対韓輸出の1件ごとの審査と、ホワイト国からの排除――こそは、韓国の喉元に突き付けた匕首です。

 これは「自称・徴用工」判決を引き金とした日韓歴史摩擦を背景に生まれましたが、今や「韓国がどんな分野であろうと米日を裏切るなら、いつでも生命線を断つぞ」と脅す、極めて強力な戦略兵器となったのです。

 だからこそ、韓国は安倍元首相が亡くなったのにつけ込んで日本に対韓輸出管理の緩和を要求し始めたのです。外相時代に2度も騙せた岸田文雄氏が首相になったことも、韓国の目にはまたとないチャンスに映っているでしょう。

 韓国に近い外交官や学者、記者は「韓国に譲歩しないと米国に怒られる」と言って回っていますが、現実は正反対です。「今、韓国をホワイト国に戻したら、米国に怒られる」のです。

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