ドローンビジネスは「特許」から組み立てる――田路圭輔(エアロネクスト代表取締役CEO)【佐藤優の頂上対決】

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ライセンスビジネス

佐藤 非常に面白い展開ですね。田路さんが社長になられる前、ここはどんな会社だったのですか。

田路 バルーン空撮の第一人者で技術者の鈴木陽一氏が設立したのですが、まだ戦略も経営基盤もない状態でした。

佐藤 ドローンといえば、中国の独壇場です。機体は中国製と競合しないのですか。

田路 私が社長に就任した2017年はドローンブームで、確かに中国の「DJI」という会社が他を圧倒していました。いまさらドローンの機体を作ってもしょうがないと言われましたが、私はある発見をしていたんですね。

佐藤 何でしょうか。

田路 私は、DJIの機体は空飛ぶカメラ、「撮影用ドローン」だと気が付いたんです。だからDJIを「カメラメーカー」と定義した。でも一方にはヒトやモノを運ぶ「移動用ドローン」という市場もあります。そこにこそものすごいポテンシャルがある。

佐藤 なるほど、DJIのドローンは目の延長でしかないわけですね。

田路 移動用は、人や荷物を抱えて移動するわけですから「重心」が大切です。それを安定させる技術があれば、グローバルで勝負できる。それが2017年の私のイメージでした。

佐藤 エアロネクストは、その技術の特許がある。でも機体自体は作っていませんね。

田路 普通は特許や技術を製品化して販売するという発想になりますが、それでは絶対に勝てないと思います。なぜなら、これからできていく市場なのに、製品を作るのは合理的でないからです。誰が何を求めているかわからない状態で、ソフトウエアならともかくハードウエアを作るのはリスクが高すぎる。工場を作れば、数十億円単位のお金がかかります。私が考えたのは、機体は技術をライセンスした相手に作ってもらい、製造や販売のリスクを負わないというビジネスモデルです。

佐藤 では、いま機体はどこが作っているのですか。

田路 ACSLという会社です。私どもがライセンスした技術で「エアートラック」という機体を作っています。物流用はそれがデファクトスタンダードになると思います。同社はドローン専業の企業では唯一上場していて、おそらくは国産ドローン市場のキープレーヤーになるでしょうね。

佐藤 ライセンスを与えているのはこの1社だけですか。

田路 そうです。知的財産のビジネスでは、一番になるところにライセンスするのがセオリーです。市場ができる前にセカンドライセンシー、サードライセンシーをどんどん作っていくのは戦略として正しくありません。一番いいのは、ファーストライセンシーと市場を作り、まずデファクト化するのです。その上で、市場が大きくなったら、その秩序の中にセカンドライセンシーを入れていく。

佐藤 数社による寡占状態にはしない。

田路 寡占化しないようコントロールします。ファーストライセンシーがだいたい50%くらいを取ってしまうと、市場の秩序ができてくるので、後から入るところはそれに倣うしかなくなります。

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