ジャーナリスト「上杉隆氏」、編集主幹に就任した新聞社から提訴されていた

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「“残念”と言うほかありません」

 上杉氏との窓口になっていた石塚氏にも話を聞いた。

「上杉さんにも色々と事情があったのだとは思いますが、“AI記者”に関しては、多額の前金を支払ったものの話が全く進んでいないのは事実です。こんな結末は予想していませんでしたし、正直、“残念”と言うほかありません。なお前金は、契約書上は500万円となっていたところ、上杉さんから1000万円にするよう頼まれました。そこに、こちらの融資の関係で200万円を加えた合計1200万円を支払い、200万円はすぐに返してもらう形をとりました。また、この件で『にいけい』が催告書を送った際に、大量の請求書が届いた話は今井から聞いています。『にいけい』とNOBORDER社の業務提携は、広告費用を請求されるような内容ではありません。そもそも、『にいけい』は定期的に『ニューズ・オプエド』の番組コンテンツの制作を担当しており、他にも頻繁にニュースを提供していた。その代わり上杉さんには『にいけい』でコラムなどを書いてもらっていました。我々としてはコンテンツを提供し合っていたという認識ですが、上杉さん側は“番組の枠を広告として『にいけい』に提供していた”と曲解しているのではないでしょうか。『ニューズ・オプエド』の番組では『にいけい』のCMも流してもらっていましたが、こちらのサイトでも『ニューズ・オプエド』のバナー広告を貼っていました。私と上杉さんの間で何らかの内諾があったということもありません。コンテンツ制作の負担は『にいけい』側の方が重かったと思うので、上杉さん側の請求が通るなら、むしろこちらが請求したいくらいですよ」

 石塚氏はすでに代表を退任し、今井氏が新代表に就任。そして、昨年11月14日、にいがた経済新聞社は、メディアカウンター社と上杉氏を相手取り、訴訟を起こしたのである。

「当初の訴状ではシステムの納品も請求項目に入れていましたが、“AI記者”に対する信頼が揺らぎ、経産省の補助金にも期限があるため、12月2日に請求内容を変更し、損害賠償を求めています。また、今後は刑事告訴も検討しているところです」(今井氏)

上杉氏側の回答は…

 こうした指摘に上杉氏はどう答えるのか。上杉氏が代表を務めるNOBORDER社と、上杉氏の弁護士の事務所に取材を申し込むと、以下の回答書が寄せられた。
 
 まず、にいがた経済新聞社とメディアカウンター社が、“AI記者”の開発に関する契約を結んだ経緯については、次のように説明する(以下、表記は回答書のまま)。

〈2021年10月にソフトウェア開発を(有)にいがた経済新聞(以下「にいけい」)から依頼され、契約を締結することとなったが、にいけいの一方的な事情により、半年間、契約が締結されなかった。しかし、その間にも開発を急ぎたいにいけいから強い要望があり、NDA(編集部註:秘密保持契約)しか結ばないまま口頭での依頼で作業を開始した(第一フェーズ実装済)。2022年2月、一方的に契約締結を遅れさせているにいけいに対して、メディアカウンター社(以下「M社」)から受注辞退を申し入れたところ、4月になって、にいけいから一方的に契約書が送り付けてきた〉

 にいがた経済新聞社が振り込んだという1200万円については、

〈2022年5月より遅れぎみの他の作業AI開発チームらによって最終算出し、これまでの作業人、初期構築費として3分の2の1000万円をにいけいに請求し、一方、下請け各社には、M社の親会社のNoborder社が立て替えで支払いを行った。請求書および口座振り込み歴あり。なお、にいけいからM社への振り込みは、上記について了解したうえで、にいがた経済新聞の石塚社長から1200万円が振り込まれた(記録あり)。同日、「振込金額を間違えた」と石塚氏から連絡があり、200万円の返金を求められ、同時刻、にいけいの口座に返金した。全体の請求金額は1500万円で、残り500万円は納品後に支払うとなっており、開発作業の詳細を定期的に打ち合わせ中に、なんの前触れもなく一方的ににいけいが訴訟してきたために、作業を中断している〉

 加えて、NOBORDER社が立て替えたという下請け業者との金銭的なやり取りに関しては、こう綴られている。

〈事前作業分を行った下請け各社に対してはNoborder社が立て替え支払い済です。なお、立て替え払いをしていたNoborder社には、6月27日にM社から500万円払われております。記録あり。また8月24日に事務代行費などの手数料の200万円をN社(P社やI社などのエンジニアに)、さらに追加作業分として10月2日にS社(編集部註:回答書では企業名)に200万円支払い。10月の時点で、合計900万円を作業している会社に支払っています。残りの100万円はメディアカウンターの契約通り10%の手数料です〉

次ページ:〈訴権の乱用どころか、虚偽告訴罪に該当すると考えています〉

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