「大人の修学旅行」が楽しい! 気の置けない仲間は異業種にいる?(中川淳一郎)

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 オッサンになっても、バカなことを必死で一緒にできる仲間がいるのっていいですわ。1月15日、唐津市の「海舟」という旅館兼飲食店で「大人の修学旅行」をやったんですよ。

 この3年間の閉塞感がイヤだな~、でも周囲の人は「コロナが終わったらね……」と付き合ってくれない。ああ、どこかに気の合う仲間はいないのか! と思ってる全国の34名が集結。宴会料理を食べ、カラオケをし、マツケンサンバを踊りまくる。世界的格闘家・青木真也選手の格闘技トークショーも行うなど、終始笑顔に溢れていたのです。

 基本的には、ツイッターで知り合った人々が中心で、唐津の運営スタッフ5名が迎え入れる形になりました。こうしたイベントは、唐津のミュージシャン兼ミカン農家の山崎幸治さんが企画をします。2022年2月から7回、一緒にイベントをしていますが、中学時代に戻ったかのような感覚なんですよね。夏、花火大会を見るイベントをやった時、「いい場所見つけたんで今から一緒に行きませんか?」と電話が来た。平日午後2時。そこから二人して山を登り、よさげな鑑賞スポットでゴザを敷いてビール。

「なんでオレを誘ったんですか?」と言ったら「中川さん以外に突然行ける人なんておらんやろうよ」と笑い合ったのです。

 今、「修学旅行」の写真を見ながら原稿を書いていますが、もう、まともな大人がやることとは思えない。集合写真を店の女将(おかみ)も含めて全員で撮り、1次会終了後は雑魚寝部屋で宴会開始。シリアスな話もバカ話もする中、次々と酔い潰れる人間が出てきてはズルズルと引っ張って布団に連れて行く。

「うわ、酒がなくなった!」となれば、誰かがコンビニへ買いに行き、朝まで宴会は続くのでした。翌朝は3台の車に分乗し、波戸(はど)岬という風光明媚な岬のサザエ小屋でサザエ・イカの一夜干し・カキを食べてはビールうぐうぐ。

 さらに飲み足りない人間は唐津市内に戻って再び宴会。帰るのが面倒くさくなってしまった人は本来の予定を変更し、1泊追加!

 すべては山崎さんの思い付きで「大人の修学旅行をやりたい。そして、そこには大物ゲストを呼びたい。中川さん、知り合いいない?」から開始。そこで青木さんに声がけをしたら快諾してくれたのでした。

 本当に不思議なのですが、今、唐津で遊んだり、こうしたイベントを企画する中核メンバーの職業はミカン農家・青果市場勤務・薬剤師・看護師・JA勤務・水道管工事・ライター/編集者(私)で、年齢はこのうち3人が私と同じ49歳。他に50歳2人、42歳、36歳。

 今回唐津に来た人々も一体職業が何なのかわからない人が多いし、年齢もバラバラ。このお客さんたちはステーキ店店主・その人のジムの先生・ジム仲間・宝くじ販売業などこれまた一貫性がない。

 思えば東京時代、同業者とばかりつるんでいましたが、「今、こんなでっかい仕事してるんだぜ」マウンティングがどこかあったように思います。それは闘志に火がつく面もあり悪くなかったのですが、ある程度の年齢になると今の状態の方が楽に生きられます。何しろ付き合う人々がライバルではないのですから。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2023年2月2日号掲載

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