なぜ「ルフィ」はフィリピンの収容所でやりたい放題だったのか…背景にある「公務員の問題」をマニラ在住歴10年の記者が解説

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シャバでの息抜きも

 便宜の対象は携帯電話にとどまらず、食料品や酒類、ゲーム、テレビなどの家財道具も持ち込み可能だ。昨年まで収容所にいた元日本人収容者A氏によれば、「だいたい商品価格の15~20%の手数料を支払えば職員が買ってきてくれる」という。

 ギャンブルもお目こぼししてもらえる。A氏は渡辺容疑者が「韓国人相手にバカラ賭博をしていた」と証言してくれたが、職員に『ショバ代』を払っていたからであろう。私がいた頃も、日本人部屋から麻雀の牌をかき混ぜる音が聞こえてきたものだ。

 シャバでの“息抜き”までも許される。逃亡犯の収容期間は通常、2週間から1ヶ月程度だが、長期の収容者は、フィリピン国内に係争中の事案があるため、それが解消されない限り強制送還されない。その手続きのため、裁判所へ出向く時は職員たちの車に乗せてもらうのだが、帰りに繁華街の日本料理屋に立ち寄らせてもらうのだ。「ガソリン代」を払って。私もその宴席に同席したこともある。

売春していた中国人女性収容者

 収容所内では男女の区分けはない。「女性収容者が男性収容者に売春もしていた」ともA氏は証言する。

「売春していたのは夜の街で働いていた中国人の若い女性2人です。韓国人ボスの“パクさん”が管理していました」

 逃亡犯がこの国に潜伏し続けることもカネで可能だ。10年前、車両窃盗容疑で和歌山県警から手配されていた当時30代の日本人男性が、拘束を見逃す代わりに入国管理局の捜査員から10万ペソ(約24万円)の賄賂提供を持ちかけられた疑惑が持ち上がったことがある。捜査員に毎月一定額を渡し、地方に潜伏を続けていた別の日本人男性もいるが、資金が途絶えた段階で拘束された。

 これだけ面会を繰り返していると、日本のテレビで取り上げられるような「大物」に会うこともある。「積水ハウス」が地面師グループに63億円を騙し取られた事件で、主犯格のカミンスカス操容疑者がフィリピンで拘束された2018年暮れのことだ。

 当時、私はまにら新聞に在籍していなかったが、たまたま別の仕事でマニラにいた。一報を聞くや否やかつての「職場」に直行したのだが、その際、私はある”裏ワザ”を使った。

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