16万人の「脳MRI画像」を見てきた専門家が解説 脱「三日坊主」を可能にするトレーニング術とは

ドクター新潮 ライフ

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三日坊主で終わってしまう罪悪感

 寿命が延び続けている今、「学び直し」が注目されています。学びは何も若い学生たちの特権ではなく、中年であっても高齢者であっても脳を刺激する意味でとても重要です。

 しかし、言うは易く行うは難し。少しかじっただけで身に付かなかったピアノを再開してみよう、若い時に学び損ねた英語を勉強し直そう、何か資格取得に挑戦してみよう――。

 そう思い立っても、いざ始めてみると、だいたいは3日程度、よくても1カ月くらい続けばいいほうだと思います。まさに三日坊主です。

 そして、多くの方は三日坊主で終わってしまった自分に罪悪感のようなものを覚え、「学び直しなんてもういい!」と投げ出してしまう。私はなんてこらえ性がないのだろうと。

脱「三日坊主」のカギ

 実は、こここそが生涯健康脳を保てるか否かの分かれ目なのです。3日で諦めてしまった方には、ぜひ認識を改めていただければと思います。なぜなら、三日坊主は「悪」ではないからです。自分に根性がないから続かないのではなく、今の状態を維持し、変化を嫌う「現状維持バイアス」が働く人間にとってはむしろ当然のこと。したがって、三日坊主の自分を責め、モチベーションを失ってしまう必要はないのです。

 とはいえ、本当に三日坊主で終わってしまえば、何も身に付かず、脳に刺激を与えることもできません。そこでスモールステップ法の出番です。

 学び直しを実践しようとする方の中には、きっとこんなふうに決意して始めるケースが多いと思います。

「まずは昔弾きたかったあの一曲から練習しよう」

 そして文字通り「一曲」を完奏しようとする。

 しかし、これではハードルが高すぎます。これこそが三日坊主で終わる元凶です。ですから、とにかく毎日ピアノの前に座って1小節だけでいいから必ず弾く、というくらいの小さな目標を立てることをお勧めします。

 そんな“小さな歩み”で本当に大丈夫なのかと不安になるでしょうが、それでいいのです。その代わり絶対に1週間は続けてください。

 英語だったら毎日ひとつ単語を覚える。資格取得のための勉強だったら教則本を1日1ページで構わないから必ず読む。

 これを1週間続けると、現状維持バイアスが逆に働くようになります。

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