ブラジルやアメリカだけでなく…中間層の怒りで世界の政治は危機に陥る

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15回の投票が意味するもの

 バイデン大統領の評価とは異なり、「米国は依然としてファシスト国家への道を歩んでいる」と社会学者フランシス・フォックス・ピヴェン氏は警鐘を鳴らしている。

 昨年11月の中間選挙で「トランプ旋風」が生じなかったことで米国では安堵の声が広がっているが、ピヴェン氏は楽観論を戒めている。

 ピヴェン氏が注視しているのが共和党が下院の多数派を奪還したことだ。

 下院では早くも異常事態が発生している。多数を占める共和党のケヴィン ・マッカーシー議員の議長選出が難航し、15回の投票を要する異例の展開となった。

 共和党の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議連)」がマッカーシー氏の議長就任に反対したからだ。議長就任と引き換えにマッカーシー氏はフリーダム・コーカスに多くの譲歩を余儀なくされた。

 これにより、フリーダム・コーカスが下院の議会運営に大きな影響力を持つようになったことは間違いない。

 気になるのは連邦政府の借入限度額を定める債務の上限の引き上げ問題だ。フリーダム・コーカスは「小さな政府」を志向しており、債務の上限引き上げに断固反対している。

 米国政府の債務の上限は今年後半に到達することが確実視されており、議会で合意できなければ、米国政府はデフォルトを宣言せざるを得なくなる。

 ピヴェン氏が「民主主義をつぶす政策を実行するのにファシストが大多数である必要はない」と指摘するとおり、デフォルト発生で経済が大混乱すれば、これに乗じて組織化された少数のファシスト勢力が米国政治の実権を握ってしまうかもしれない。

 スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」は11日に公表した「グローバルリスク報告書」の中で「今後2年間における最も深刻なリスクは物価高騰などによる生活費の危機だ」と指摘した。

 生活費の高騰で不満が高まる中間層の怒りに正しく対処しない限り、世界規模で政治の危機が発生してしまうのではないだろうか。

デイリー新潮編集部

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