実はあいまいな「Z世代」の定義 カズレーザーはかつて興味深い指摘をしていた

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 Z世代をテーマとするテレビ番組が昨年から目立つ。1月4日夜にも特番「Z世代声優が選ぶ!昭和アニメのスゴい声優50人はこれだ!」(テレビ朝日)が放送された。ところで、そもそもZ世代ってなんなんだ?

Z世代に明確な定義はない

 結論から書かせていただく。Z世代の明確な定義など最初から存在しない。だから各番組のZ世代の位置付けもバラバラだ。

 2020年から1年前までNHKのEテレが放送していた「Zの選択」はZ世代を〈1995年以降生まれ〉としていたが、2月に再開される日本テレビ「Zドラマ」枠のスタッフは〈1990年代後半から2010年代初頭生まれ〉と発言している。

 テレ朝「Z世代声優が選ぶ!昭和アニメのスゴい声優50人」の場合は〈25歳以下〉と設定した。つまり、1997年以降生まれとなる。ここまで番組ごとに定義が異なる言葉も珍しい。

 もっとも、各局がまとまらないのも無理はない。Z世代は1990年代から2000年代前半にかけて北米で一般化した言葉だが、その時点で既に定義は曖昧だったのだ。

 Z世代という言葉が生まれた発端はカナダの作家であるダグラス・クープランドの小説『ジェネレーションX-加速された文化のための物語たち』(1991年)だった。まず、この小説が、おおむね1960年代中盤から1970年終盤生まれの人をX世代と称した。X世代も定義が明確でないものの、学術書ではなく小説なのだから仕方がない。

 この小説がベストセラーになり、北米でX世代という言葉が浸透したため、次にY世代という言葉も生まれた。X世代に続く、1980年代前半から1990年代中盤までに生まれた世代を指した。なぜ「Y」だったかというと、単純にアルファベットで「X」の次だからだった。

 Y世代は2000年(ミレニアム=新千年紀)前後か、それ以降に社会に出た人たちでもある。なので、ミレニアル世代とも呼ばれる。

 やがてZ世代という言葉も生まれた。米国の用語解説集では1990年代後半から2000年代初めに生まれた人たちというのが一般的だが、単純に1997年以降生まれと定めている解説もある。

 いずれにせよ、日本のテレビ番組の解釈とはズレがある。

 唯一、日米のZ世代の解釈で共通するのは〈物心ついた時からネット環境が整っていた〉ということくらい。

日米では違うZ世代

 日米ではZ世代の捉え方も大きく異なる。米国ではZ世代が政治や消費を大きく変えていくとされ、だからクローズアップされた。なにしろZ世代は米国の全人口の約30%を占めるとされているのだ。最大勢力である。

 一方、日本でZ世代に近い10~24歳の人口は約1706万人。総人口(1億2484万人)の約13.6%に過ぎない(総務省調べ2022年末)。背景には極めて深刻な少子化がある。このため、日本のZ世代が政治や消費に与えるインパクトは米国とは比較にならない。

 日米のZ世代では目撃や体験した歴史も違う。日本のZ世代の多くが東日本大震災に震えた2011年、米国のZ世代は同時多発テロ事件の主犯とされるウサーマ・ビン・ラーディンを軍が殺害したことを知らされた。

 同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めるパートナーシップ宣誓書の受付を東京都渋谷区などが始めたことを日本のZ世代が耳にした2015年、米国のZ世代は全州で同性の結婚が合法化されたことを知った。意識もスピードも違う。

 ほかも挙げたら、キリがない。そもそも日米の若者は国家観や人生観、宗教観などがまるで異なる。米国生まれの世代論を日本に輸入するのは無理がある。おまけに日本は条件を満たす世代まで変えてしまった。日米のZ世代は似て非なる者と言っていい。

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