YouTube詐欺に引っ掛かった被害者2人の実例 共通点は中国語訛りの日本語を話す怪しげな人物

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300万円の被害

 Bさんの口座には毎日6万円から12万円、18万円と振り込まれた。小額ではあるが確かに現金が払われている。Bさんは「待ってさえいれば、そのうちに2億円以上の利益を手に入れられる」と笑っていた。

 だが、1週間も経たないうちにイシハラは音信不通になった。口座への送金もストップ。Bさんは700万円を“投資”し、返ってきたのは約400万円。差し引き300万円を騙し取られたことになる。

 詐欺組織からすれば、Bさん1人から約300万円の収益を上げたわけだ。ターゲットが10人いたとすれば、組織は7000万円を手に入れたにもかかわらず、4000万円を返金。最終的には3000万円しか騙し取れなかったことになる。

 この“利益率”をどう思うかは人それぞれだろう。だが、ここで重要な点がある。イシハラが送金してくれている間、有頂天になったBさんは周りの知人に投資話を積極的に勧めていたのだ。

 詐欺組織はBさんが“投資”した700万円の全額を騙し取ることもできた。だが、そうはしなかった。

 これはBさんが投資話を周囲に勧めてくれるのなら、Bさんに戻した400万円は“宣伝費”と見なすことができるからだろう。詐欺組織からすればお安いものである。

犯罪人引き渡し条約

 実際、Bさんの誘いに乗ってCさんも投資してしまった。同じように担当者は音信不通になり、数百万円の損害を受けた。

 やはりCさんも担当者から送金されている間、有頂天になって多くの人々に投資話を勧めていた。

 こうした詐欺組織は海外に拠点を置いている。そのため、日本の司法組織が摘発することはとても難しい。

 そもそも組織が拠点にしている国が、日本とは「犯罪人引渡し条約」を結んでいないケースが大半だ。

 2020年の段階で日本と条約を結んだ国は、アメリカと韓国の2カ国しかない。ちなみにイギリスは115カ国、フランスは96カ国、韓国は25カ国と条約を締結している。

 日本との条約締結国が少ないのは、日本が死刑存置国だからという説も根強い。いずれにしてもそんな背景から、海外の犯罪組織にとって日本は「稼ぎやすい国」だろう。

 日本人にとっても「海外組織による犯罪被害は泣き寝入りせざるを得ない」という状況になっている。司法による摘発は期待できないのだから、被害に遭わないよう心がけるしかないのだ。

藤原良(ふじわら・りょう)
作家・ノンフィクションライター。週刊誌や月刊誌等で、マンガ原作やアウトロー記事を多数執筆。万物斉同の精神で取材や執筆にあたり、主にアウトロー分野のライターとして定評がある。2020年に『山口組対山口組』(太田出版)を、22年に『M資金 欲望の地下資産』(同)を上梓。

デイリー新潮編集部

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