アントニオ猪木さんが語った「追想の七番勝負」 「アンドレはクレバーな男 仲間におごるのが大好きな親分肌だった」

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病、老、死

 そしてモハメッド・アリ戦からちょうど43年後の2019年6月26日に最後の参議院登院を終え、政界からの引退も表明した。

「“元気ですかーーっ”とか“人は歩みを止めたら老いる”といつも言ってきた自分の方が、かなり元気をなくしちゃったからね……」

 長い闘いの年月の結果、猪木は全身に故障があり、レスラー時代からの持病として痛風や糖尿病を抱えている。ここ数年は杖を頼ったり、車椅子に乗る姿も目につくようになってきた。

 そこへきて先日、愛妻を亡くしたばかり。いかに歴戦の勇士とはいえ、失意のどん底から立ち上がれなくとも不思議はない。

「兄と、妻が続いて旅立って行きました……。特に妻は最後まで死と闘うすさまじい姿で、私は人間の極限を教えてもらったというかね。彼女にはとても感謝していますよ」

「……私の死生観はよく〈砂漠の足跡〉に例えるんですが、足跡なんか風が吹けば、時が経てば消えてしまう。しかし“足を踏みしめた時の思いが残ればいい”っていうもの。近しい人が亡くなり、体もいろいろ悪いけれども、お迎えが来るその日までは、まだまだやりますよ!!」

 それでこそ、「燃える闘魂」だろう。

 かつて巨額の借金を背負うことになった事業に関しても、やる気マンマン。

「失敗したと言われて手放した事業も、軌道に乗ったものも多いんですよ。いま考えているのは、プラズマを利用して世界のゴミ問題を解決するというもの」

 新事業を語り始めると、猪木の目はらんらんと光を放ち、リング上で強敵たちと対峙した時代のまま。

 アントニオ猪木の人生は闘うことで光り輝き、大衆を魅了してきた。今後も闘い続けるのが運命なのだろう。

「まぁ新事業は、周囲はみんな“やめろ”って言うんだけどもね(笑)」

勝 東児(かつとうじ)
コラムニスト。別名で時事問題等のコラムも手掛ける。プロレスファン歴は40年を数え、猪木とメディアに関する書籍を準備中。

デイリー新潮編集部

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