「ゴーン」の家政婦は見た! 突然のレバノン逃亡、直前に見せていた一家の様子

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深い家族愛

 ゴーンがわざわざ弁護士事務所で電話していた理由は、キャロル夫人が事件の関係者と認定され、接触制限をかけられていたためだ。近づけない夫人に代わって、ゴーンを慮る彼の姉妹、そして3人の娘たちが麻布の家を頻繁に訪れていたという。

「3人とも目に入れても痛くないほどだったのが見ていて分かりましたが、カルロスがとくに可愛がっていたのは三女のマヤちゃんじゃないですかね。彼女が来るとメロメロなのが見ていてわかりました。麻布の家には、娘ちゃんたちやお姉さんたち用の部屋もあって、カルロスは基本的にそこへは立ち寄らない。でも唯一、マヤの部屋にだけは寄って、彼女のベッドでうたた寝をすることがありました。安心するんでしょうね。その時はマヤが来ていたタイミングだったので『パパが寝ているからシーだよ』とわたしに合図していたのを覚えています」

 けいこさんは、そんなファミリーと共に日々を過ごした。たとえば食事もいっしょに作ったそうだ。

「娘ちゃんたちは身体を気遣って、グルテンフリーの食事をカルロスに作っていました。彼女たちの目がないときは、ふらりと自転車で買い物に出かけて行って、ケバブサンドを3つ買ってきて一人で食べている、なんて姿も見ましたけれど、カルロスは基本的に外食が好きじゃないみたい。ただし本人にできるのはお茶に生姜をすりおろすことくらいでしたから、ブラジル料理の煮込みなどを、姉妹や娘ちゃんが作っていました。私もサラダなどを作りました。『オリーブの丘』で働いていたことがあるので、その配合を真似たレモンドレッシングは評判でしたよ。あとカルロスはツナが好き。1,800円くらいする瓶入りのツナのオイル漬けに、グルテンフリーのクラッカーをあわせてよく食べていた。 わたしが余っていたツナにマヨネーズと数滴のだし醤油を足して、日本風のツナマヨにしたら、これも『おいしい、おいしい』と食べてくれました。次女のナディーンもこれが大好物で、よくリクエストされました」

 けいこさんが作る餃子やラザニアも家族たちから好評だったそうだ。大富豪とその令嬢らしからぬ素朴さだが、食事についてはこんなエピソードも忘れられないという。

「あるときナディーンが、お腹がペコペコだから目玉焼きを作りたいとキッチンに来たんです。一個の目玉焼きに10分ぐらいかけて、きれいなとろとろ黄身の目玉焼きを作っていました。それを見ていたら『けいこもお腹空いてる?』と、自分を後回しにして私に先に食べさせてくれたんです。白身の上に小さく角切りにしたチーズをパラパラのせて、味付けはトリュフ入りの塩でした。思いやりが凄く嬉しかったです」

 ゴーンは日本酒、ワインを好んだが毎日は飲まず、誰かが食事を共にするときだけ。ワインも一本開けられなかったというから、とくべつ強いわけではなかったようだ。こだわりらしいこだわりは、4個290円のちょっと高級なトイレットペーパー。お気に入りの銘柄があり、ネットや麻布のドラッグストアで取り扱いがなかったため、けいこさんが出勤前に自宅近くのスーパーマーケットで調達していたという。

「拘置所から出てきたばかりの頃、身体が弱っていたのでしょう、風邪を引いて喉が痛いとカルロスがいうんです。だから漢方薬を買ってきて『苦いからまず水を口に含んで、そのあとに粉薬と一緒に飲み込むんですよ』と説明した。でもカルロスは何度やっても薬を口に入れる前に水を飲んじゃう。不器用なんでしょう。『あーどうしよう。わからない』と困った顔をしているのを見て、娘ちゃんといっしょに爆笑してしまいました」

 一方で、“カリスマ経営者”らしい頭脳も垣間見えた。

「計算はとっても早かったですね。その日の買物に使った金額と、わたしの時給をまとめ、日付ごとにメモにしていたんです。4桁5桁の数字が、10日分あったでしょうか。娘ちゃんが計算機で合計しようとしたら、カルロスが『どれどれみせて』と覗いてきて、あっという間に暗算で答えを出したのには驚きました」

 我慢を強いられた暮らしでも、けいこさんや家族の前で、ゴーンが不満や怒りを漏らすことは決してなかったそうだ。ただし「自室から怒った声が聞こえたことが3回ほどありました。奥さんとの面会が却下された時だったと思います」。表には出さずとも、フラストレーションは溜まっていたのだろう。

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