「黒田サプライズ」はインフレ抑制に有効だが…金融危機の火ダネになりかねない悪影響も

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日本の住宅市場の脆弱性

「事実上の金利引き上げは景気の逆風になる」との心配が生じている。

 注目を集めているのは住宅ローンの動向だ。住宅ローンの金利は米国の利上げのせいで既に上昇傾向にあるが、日銀の決定直後から10年物国債の利回りが高騰しており、今後、上昇傾向は強まるだろう。

 日本の住宅ローンの融資残高は過去10年間で約40兆円増加し、6月末時点で220兆円を超えた。特にマイナス金利が導入された2016年以降は年2~3%のペースで伸びており、住宅ローン需要が旺盛だったバブル期と比べても倍増し、過去最大規模だ。

 日本では金利上昇リスクがある変動型を選ぶ人が7割を超えていることも気がかりだ。

 今回の日銀の決定では短期の政策金利はマイナス1%に据え置かれたため、変動金利への影響はないと見られているが、今後の動向に要注意だ。

 一方、日本の住宅の資産価値は伸び悩んでいる。2020年末時点の住宅の資産総額は前年比でマイナスとなっており、ローンの負債以上に住宅の資産価値が上がり続けている米国の状況とは対照的だ。

 残念ながら、日本の住宅市場は脆弱性を抱えており、金利の上昇が続けば、経済の減速要因になりうると言わざるを得ない。

「日銀の決定は国内経済にとどまらず、海外の金融市場にも悪影響をもたらすのではないか」と筆者は危惧している。

 国際通貨基金(IMF)は日銀の決定について「賢明な措置だ」との見解を出したのにもかかわらず、米国を始め各国の国債利回りが軒並み上昇した。

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