今年解体された「中銀カプセルタワービル」 海外から「なぜ日本は世界的に有名な建物を守らないのか」と叱る声

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 2022年、世界的に有名かつ貴重な日本の建築が解体された。東京・銀座にあった「中銀カプセルタワービル」だ。竣工は1972年。それからちょうど50年を経て、文化庁が定める登録有形文化財の登録基準を満たした年に、この世から消え去ってしまった。しかし、ただ無くなるのではなく、使用されていたカプセルの一部は有志によって修復され、世界へ送り出されようとしている。この保存活動の意義、そして多くの日本人が知らない中銀カプセルタワーの世界的評価を専門家に聞いた。東大大学院で教える工学博士が「壊すべきではなかった」と話した理由とは?【華川富士也/ライター】

“救出”されたカプセル23個の行方

 中銀カプセルタワービルの解体は今年4月から始まり、すでに跡形もない。解体作業中、140あったカプセルの大部分はその場で壊されたが、選ばれた23個のカプセルが“救出”され、トラックに乗せられて千葉県の再生工場へ運ばれた。

 取り外されたカプセルの再活用を進める「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」の代表・前田達之氏によれば、「運んだ23個のカプセルのうち14個は、内装を50年前のオリジナルのものに戻し、美術館や商業施設に展示してもらいます。残りの9個はスケルトン状態にしてあり、引き取る方次第で新たな使い方を模索してもらいます」という。

 オリジナル内装に戻した14個のうち、8~10個は海外に送られ、残る4~6個は日本で活用される。

 この数字を見て気づかれただろうか? 国内より海外に送られるカプセルの方が多いのだ。前田氏によれば「国内の美術館、博物館などからの反応はあまりなかった」そうだ。

 実は、同ビルの注目度は日本国内より海外の方が高い。

「海外の建築学で、“メタボリズム”はメジャーなムーブメントとして位置付けられています」と事情を解説してくれるのは、工学博士で東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の小渕祐介准教授だ。小渕氏はカナダの大学を経て米・南カリフォルニア大学卒業、プリンストン大学大学院修了。英国のAAスクールDRL共同ディレクターを経て、2010年より東京大学大学院に着任した。

「海外で建築を学んでいると、メタボリズムはアーバニズム(都市計画)の非常に重要なものとして出てきます。欧米で建築を勉強した学生は、みんな当たり前にメタボリズムを学んで知っているんですよ」

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