妻の連れ子が留学のために風俗でアルバイト…黙認したアラフォー夫にある晩起きた、“信じ難い事件”とは

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見えてきた母娘の“溝”

 ところが一緒に暮らすうち、仲のよかった有希恵さんと千穂さんの間に、微妙な溝が生じていることがわかってきた。それもよくある母娘の葛藤のようなものだから、気にしなくていいはずなのに、有希恵さんは血のつながりがないだけに不安だと繁雄さんに訴えるようになった。

「今までは誰にも言えなかったけど、言える相手ができたから言葉にしたら気持ちの中でも顕在化してしまった。そんな不安だと思います。有希恵が言うには、千穂のアルバイトがどういうものなのか心配だ、と。僕はレストランだと聞いていたし、20歳過ぎているのだから娘を信用しようと言ったのですが、有希恵は違うと言い張る。『あの子、もっと危険なことをしていると思う』って。じゃあ、僕が聞いてみるよということになりました」

 たまたま有希恵さんが出張で留守にすることがあり、千穂さんを食事に誘った。彼女は目を輝かせて、行きたいイタリアンを挙げた。高い店だったが、繁雄さんは奮発したという。

「大学の話などを聞き、最後にさりげなくどういうアルバイトをしているのか聞いたら、『繁雄さんには話してもいいかなあ』と意味ありげに言うんです。結局、有希恵のカンは当たっていました。千穂は風俗で働いていたんです。彼女は悪びれもせず、『私、人気があるんだよ』と店のホームーページを見せてくれた。いや、ちょっと待てという感じでしたね。呆然としていたら、『なあに? いけない?』と。いけなくはない。僕も風俗に行ったことはあるし、そこで働く女性たちに心を慰められたこともある。だけど妻となった女性の娘が風俗で働くのを諸手を挙げて賛成とはいかない。『それって職業差別じゃね?』と言われてぐうの音も出なかったけど」

 そこまで言われると反対する理由が見つからなかった。ただ、何のために風俗で働いているのかと尋ねると、彼女は「イタリアに留学して芸術関係の勉強をしたいから」と明確に答えた。大学で芸術関係の講座をとって、イタリアの美術に魅せられたのだという。

「でも、そんなことを言ったらママが苦しむと思う。お金ないから。自分が産んだわけでもない私をここまで育ててくれたんだもの、あとは自分の人生を自分で作っていかなくちゃと思ってる。だからママには言わないでって、真剣に話す千穂を見て、僕は涙が出ました。千穂は千穂できちんと考えている。お金がたまったら仕事はやめるし、大学関係からの留学も狙っているというので、とにかく思ったようにがんばってみなさいとしか言えなかった」

 千穂さんはその日、「繁雄さんならわかってくれると思った」とうれしそうだった。実の親から離れて育ったこの子にも、さまざまな葛藤があっただろうと繁雄さんは思った。だから翌日、帰宅した有希恵さんに、千穂さんはやはりレストランや喫茶店でバイトをしているようだと伝えた。その店に行ってみるという有希恵さんに、繁雄さんは「今の店は辞めて、もう少し時給のいい店に移るらしい。土日は他の店でも働くようだし。親の出る幕じゃないと思う」と止めた。

「シゲちゃんがそう言うなら信用する、と有希恵はわかってくれました。ただ、千穂についてはその後も心配だったから、有希恵のいないところで大丈夫かと声はかけるようにしていました。そのたびに彼女は『順調だよ、ありがとう』と。千穂との秘密をもつことで、僕はどこかうれしかったのかもしれませんね」

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