「サッカーW杯の快挙」が「野球界の喉元」に突き付けたもの 「野球界」はサッカーに学び、変革できるか

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改善を放棄

 日本のプロ野球はどうだろう?

 ポスティングでMLBに移籍した場合、MLB球団から多額の移籍金をもらえることは知られている。だが、ドラフト会議で指名した選手の大学や高校に謝礼を払う話は聞いたことがない。もし高校や大学の監督に報酬を払えば「裏金」として問題になる。

 NPBは、ジュニアから高校、大学、社会人の年代まで、選手を自分たちで育成する努力をしていない。日本のプロ野球は、少年野球も含むアマチュア指導者の熱烈な情熱と献身によって育成された選手を奪うだけの形でずっと続いている。しかも、アマチュア球界への還元(謝礼)すらほとんどない。

 野球界は、サッカー界に学ぼうとするのか、しないのか。

 野球とサッカーをこのように比較すると、その発想自体が狭いと笑われそうだが、実際に比較して見ると、いかにサッカーが本質的な問いかけを続けてきたか、野球が改善を放棄し、変わらずに来たかがよくわかるのだ。

補欠ゼロ

 サッカー界が野球に先駆けて実行した変化のひとつは、学校の部活動から地域クラブへの路線変更だ。Jリーグが発足した時、ジュニアからユース(高校生年代)の下部組織を作るよう義務づけた。それまで高校生は学校単位の部活動が中心だったが、一大転換した。そのため、「国立」とか「選手権」と呼ばれた正月の全国大会の権威が曖昧なものになった。優秀な高校生の大半が、高校でなくJリーグ傘下のクラブでサッカーをするようになったからだ。高校野球で言えば「甲子園」の絶対的存在にメスを入れたのだ。今は一時より高校での活動を選ぶ選手も増え、選手権の価値も再認識されている。結果的にサッカー界は高校とクラブ、ふたつの選択肢が整った。

 もうひとつ画期的な変革は「補欠ゼロ」の政策だ。サッカー界は、10数年前から「補欠ゼロ」の目標を掲げ、部員の多い学校やチームでも全員が試合に出場できる環境を整えた。トーナメントとは別にリーグ戦を実施し、各都道府県には1部、2部、多いところは3部、4部とあり、全員にチャンスを与えている。

 野球はと言えば、相変わらず練習試合だけで、全員が公式戦に出る機会を作ろうとの動きは最近一部でようやく始まったばかりだ。

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