「サッカーW杯の快挙」が「野球界の喉元」に突き付けたもの 「野球界」はサッカーに学び、変革できるか

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互いにリスペクト

 12月15日、日本サッカー協会は理事会を開いて「育成還元金」の支給を決めたというニュースが流れた。以下はスポーツ報知からの引用だ。

「日本サッカー協会は15日、理事会を開催し、カタールW杯に出場した日本代表26人が満11歳の4月1日~満21歳の3月31日までに所属したクラブ、学校などに一律30万円を『育成還元金』として支給することを決議した。

 支給総額は7500万円。海外クラブ所属した期間は除く。2018年ロシアW杯から導入された制度で、今回の支給が2度目となる。」

 代表選手が3年間在籍した中学や高校に90万円が支給される。小学校5、6年時に所属したジュニアクラブなら60万円だ。このような配慮も制度も野球界にはない。

 サッカー界には選手を育てることを、そのチームの事業と認め、選手を譲り受けたチームが元の所属チームに報酬を払うことが正当に認められている。サッカー界には互いにリスペクトがある、と私は敬服する。

 元々サッカー界には、「連帯貢献金」という制度が国際的に存在する。国内での移籍では発生しないが、海外への移籍、海外チーム間での移籍の際にこれが生じる。

十分な見返り

 例えば、Jリーグに所属する日本人選手がヨーロッパのチームに移籍すると、あるいは、すでにヨーロッパで活躍する日本人選手が他チームに移籍すると、その移籍金に応じて、ジュニア時代に所属していたクラブに「連帯貢献金」が入る。仮に移籍金が10億円なら、その5%の5000万円を12歳から23歳までに所属したクラブで分配する。少年サッカークラブにも、高校にも、Jリーグのユースチームにも、1000万円単位の収入がもたらされる。海外で活躍する選手を育てたら、十分な見返りがあり、その後の活動資金に充てることができるのだ。

 他にも「トレーニング費用(育成保障金)」の制度がある。連帯貢献金ほど高額ではないが、国内移籍の場合も発生する。例えば高校生がJ1チームに移籍した場合、卒業した高校に90万円、中学に30万円、小学校にも10万円が支払われる。

 海外の下部リーグの中には、こうした貢献金や保障金を重要な収入源として選手強化に力を入れているチームがあると聞く。下部のチームは、リーグで優勝するだけが目的ではなく、選手を育て、上部リーグで活躍する優秀な人材を輩出する ことで球団経営の基盤にできるのだ。

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