「カスハラ」の7割以上が男性だった!50代以上で顕著に 昭和・平成の“金銭要求系”のクレーマーとの一番の違いは?

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「愚かな人には…」

 そこで、筆者が同社の「顧問」という立場で対応にあたったわけだ。男性は「マスコミの知り合い」とやらの具体的な名前も出さず、「逆ギレ」のように説教を繰り返すだけだった。そこで筆者はこんな「提案」をした。

「お客様が納得できないということは、こちらの会社の誠意が伝わってないからですよね。私から社長にかけあってみますので、例えばこれくらいのお金なら納得できるという目安を教えていただけますか?」

 すると、さっきまで威勢のよかった男性のトーンが明らかに落ち、「そういう話じゃない」「お金で解決するなんておかしいでしょ」と言い出して思いの外あっさりと帰っていった。その後、男性客が文句を言ってくることはなくなった。

 なぜこういう反応になったのかというと、この男性が「正義の人」だからだ。暴言を吐くのはあくまで「自分が正しい」という承認欲求を満たすためなので、そこに「金品要求」が入るとおかしなことになる。しかも、筆者の「提案」に乗ってしまうと、それが証拠となって「逮捕」される恐れもある。「企業に理不尽なクレームを入れて金品を要求したら恐喝にあたる」というのは一般人もよく知っている話だ。こうしたことを踏まえて「正義」で頭がのぼせあがったカスハラ客に冷や水を浴びせたのだ。

 貨幣論や市場社会論でピーター・F・ドラッカーなど後世の経済学者にも多くの影響を与えたカール・ポランニーという経済人類学者が、こんな名言を残している。

「愚かな人にはただ頭を下げよ」

「自分は正義」という思い込みのため、弱い立場の人間を侮辱するというのは「愚かな人」以外の何者でもない。まともに取り合っても損しかない。触らぬ神に祟りなしではないが、「ただ頭を下げよ」でスルーするのが、令和の賢いカスハラ対策なのだ。

窪田順生(くぼたまさき)
報道対策アドバイザー/ノンフィクション・ライター。1974年生まれ。学習院大学文学部卒業。雑誌や新聞の記者を経てフリーランスに。現在はライター業とともに、広報コンサルティングやメディアトレーニングも行っている。事件ノンフィクション『14階段 検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』や、広報戦略をテーマにした『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』等の著書がある。

週刊新潮 2022年12月15日号掲載

特別読物「『ギスギス社会』の顧客対応に悩む貴方へ…『令和のカスハラ』への賢い対処法」より

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