NHK新会長「稲葉延雄氏」に早くも不安の声 5代続いた財界出身会長とは明らかに違う

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 12月5日、NHK経営委員会は来年1月24日で任期が終わる前田晃伸会長(77)の後任に、日本銀行元理事の稲葉延雄氏(72)を選任した。外部から会長を起用するのは、2008年以降、6代連続となる。

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 2008年から会長を務めたのは、福地茂雄アサヒビール元社長、松本正之JR東海元社長、籾井勝人米国三井物産元社長、上田良一米国三菱商事元社長、そして前田みずほフィナンシャルグループ元社長だ。

 稲葉氏は、1974年に東京大学を卒業後、日本銀行に入行。審議役、考査局長を経て2004年に理事に就任した。08年に退任後、リコー特別顧問になり、専務、取締役会議長も務めた。現在はリコー経済社会研究所の参与である。

「NHK会長に元日銀理事というのは、適任ではないと思います」

 と話すのは、NHKのOBで経済学者の池田信夫氏。

自民党にコントロールされる

「これまで、外部から招いた会長といえば、いづれも商社や銀行など財界の大物でした。NHKは放送の中立性を守るために兼職を禁じられているので、会長は一線を離れた方々でした。いわば、半ば名誉職のようなポストです。それでも一流の財界人ですから、経営の手腕はあった。ところが日銀出身の方に経営のことが分かるのでしょうか。難しい経営判断を下すのは困難だと思いますね」

 稲葉氏は6日の記者会見で、「公共的な使命感に基づいて制作に専念、邁進できる組織をつくる」と発言している。

「彼は、公共性の使命は日銀に通じると言っていますが、日銀の公共性とNHKの公共性は違います。日銀は競争のない世界。NHKは視聴率で民放と競争していますからね」

 そもそも、東洋経済オンラインによれば、NHK経営委員会は、丸紅元社長の朝田照男氏を最終候補にしていた。ところが、自民党から横やりが入り、急遽、稲葉氏に決まったという。

 自民党は、地上波と衛星放送契約をそれぞれ1割値下げするようNHKに求めていたが、これに最後まで抵抗したのが前田会長だった。加えて、管理職の3割削減などを自民党に説明することなく進めたため、不評を買っていた。朝田氏は前田会長と親しい間柄だったので、自民党から待ったがかかったというのである。

「これまでは、三井物産、三菱商事出身もいた。ですから、丸紅元社長を最終候補にしたのは十分考えられます。自民党が横やりを入れて日銀元理事を選んだのであれば、余計に心配です。次期会長は自民党にコントロールされるでしょうからね」

 NHK会長については、内部から昇格させれば局内のことを熟知している。外部から起用すれば、思い切った改革ができる。長年、どちらが良いのか議論されてきた。

「私は外部の方が良いと思います。内部だと、受信料収入という既得権を守ろうとするだけですから、改革ができません」

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