浮気疑惑が引き金で、妻は秘密のパーティーに参加すると言い出し…おかげで夫婦の会話は増えたが

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これでいいのか、天罰が当たらないか

 コロナ禍に入って、その類いのパーティーもほとんどなくなったが、知り合った夫婦との交歓は続いている。誠治さん自身は何もしないから、相手夫婦も女性は自分はしたくない人に限られる。

「ときには知り合いのツテを頼って、妻の好みの独身男性を呼ぶこともあります。夫婦の夜の関係も以前より活発になりましたが、そんなときはやはり嫉妬が渦巻きますね」

“普通の夫婦”ではなくなってしまった罪悪感のようなものを、彼は抱えているという。だが妻はいろいろなものから解放されて楽しそうだ。妻の脅迫まがいの提案から始まった、こうした常識外の行動がいつまで続くのか、誠治さんにはわからない。

「確かに妻とは会話も増えた。お互いへの気持ちも強まった。だけど果たしてこれでいいのか、これがいつまで続くのか。本当に夫婦仲は深まっているのか。いろいろ考えると、何も確たるものはないんですよね。結局、お互いがそう思い込んでいるというだけで。僕ら夫婦の歴史を考えたら、結婚して13年くらいはごく普通だった、そして4年前から以前の僕だったら考えられないような外れた道を突っ走っている。妻には合っているんでしょうけど、僕は常に『これでいいのか、天罰が当たらないか』とこわごわつきあっている気がします」

 誠治さんが他の女性とそういう関係になろうとしないのは、妻に遠慮しているからではない。やはりそういう欲求が薄いからだ。そして「人前でそういうことをするのは抵抗がある」というただ一点。妻は「あなたは自分を解放できていない」と言うが、解放されれば幸福感を得られるとは限らないと彼は考えている。

 不思議な夫婦関係だが、他にもそういう好みをもっている人たちは少なからずいる。おしなべて夫婦は仲良しだ。他人からは理解されなくても、夫婦それぞれが納得していればいい。清香さんが言うように「やり残した後悔を抱えたまま」この世を去るのは、あまりにも悲しい。

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 乱交パーティーにまつわる報道では「参加者たちが納得しているのであれば問題ないのではないか」という意見が寄せられることが多い。法律の問題はさておいても、当事者たちが良ければいいではないかというものである。亀山氏も〈夫婦それぞれが納得していればいい〉と書く。

 しかし話を聞く限り、誠治さんは納得をしてはいない。一方で、パーティーに参加中の妻の様子を語る時には苦笑する余裕も見せている。妻に付き合ってのパーティー参加も4年続いているというから、徐々に受け入れつつはあるのだろう。

 夫婦の今後は誠治さんにかかっていることは間違いない。清香さんは「後悔を抱えながら生きていくのはいや」との思いから自分の欲望に従った。では、もし、誠治さんも同じ思いを抱き、欲望に従ったらどうなるか。どうやらその方向が「妻と一緒にパーティーを楽しむ」ことにはならなさそうである。たとえば「本当はもっと深い関係になりたかった」と語る同級生と、ふたたび関係をもつことになったら……。夫婦の在り方は、また変わったものになるだろう。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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