人口増加、大気汚染、深刻な人権問題…台頭するインドは中国の二の舞になるか

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かつての中国を彷彿とさせる動き

 インドでは教育水準の低さがさらなる多産を招き、結果として子供に対して十分な養育費をかけられないという悪循環が生まれている。

 そのせいでインドで「望まざる妊娠」が多発している。国連人口基金によれば、世界で発生する望まざる妊娠の7件に1件がインドで発生しているという。

 このことが深刻な人権問題を引き起こしている。

 インドでは跡取りとして男児を望む傾向が非常に強いことから、専門家は「毎年非常に多くの女児が出産直後に命を奪われるという悲劇が起きている」と批判している。

 長年続いてきた「子殺し」という忌まわしき慣習は、インドが大国になればなるほど国際社会から問題視されることになるだろう。これに対してインド側が猛反発すれば、深刻な軋轢が生じることにもなりかねない。

 外交面でも気になる動きがある。これまで力の誇示を控えてきたインドは、自信を強める国民の期待に呼応するかのように、存在感を誇示し始めている。

 ロシアのウクライナ侵攻以降、インドは割安となったロシア産原油の購入を拡大するなど自国の利益を追求する方針を鮮明にしている。米ロ両国との良好な関係を武器にインドの国際的な発言力も高まっている。

 軍事力も経済の 拡大のペース以上に増加させており、インドの軍事費は既に米中に次ぐ世界第3位だ。軍事力拡大の主な目的は国境紛争を抱える中国に対する備えだ。

 中国と国境紛争を抱えるインドのモディ政権は、3期目の習近平政権が対外的に強硬姿勢を続けると警戒している。このため、4カ国連携枠組み「クアッド」を通じて関係を深める米国の力を利用する姿勢を鮮明にしつつある。

 インド軍と米軍は11月29日から12月2日にかけて合同演習を実施した。合同演習は2000年代初頭に開始されたが、今年は初めて中国との係争地の間近で行われた。中国側が猛反発しているのにもかかわらずに、だ。

 インドの台頭はかつての中国を彷彿とさせる。当初、世界経済の救世主と歓迎された中国は成長するに従い、内政面での批判に聞く耳を持たなくなった。対外的にも強硬路線に転じるようになり、今や国際社会の「問題児」になりつつある。

 台頭するインドが今後、中国の「二の舞」を演じない ことを祈るばかりだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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