藤井聡太五冠が竜王防衛 敗れても評価される広瀬章人八段の“藤井研究”

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広瀬が積み重ねた「藤井研究」

 3日朝、広瀬の「封じ手」の検討は、立会人の藤井猛九段(52)によって行われ、藤井が自陣の最下段に据えていた飛車にぶつける「3八銀」だった。

 これは大方の予想通りだったが、この一手に対して通常は飛車を「1九」「5九」などに逃がそうと考える。しかし藤井は「4六飛」と縦に動かし、この飛車を捨てたのだ。広瀬がこの飛車を取ると、藤井は「2六角」と打ってきた。

 藤井の陣形は玉を囲ってはいない上、飛車を打ち込まれやすい形だったので、素人目にも飛車は絶対に渡さないだろうと思っていたが違った。

 藤井が大ゴマを切り(捨て)ながらそのまま攻撃を続ければ、広瀬の駒台には次々と駒が増え、反撃の武器は十分蓄えられる。しかし藤井は、たとえそうなってもわずかの差で自玉が詰まないことを読み切っていたようだ。読み切れなければ、大胆に攻め続けることはできない。

 ABEMAで解説していた中川大輔八段(54)らも、広瀬の攻めについて様々な変化を解説していたが、簡単には結論が出なかった。

 広瀬は「藤井研究」を積み、様々な新戦法を繰り出した。藤井も驚いてはいたが、冷静に分析して応戦した。持ち時間を一挙に消費することを厭わず、時に大長考もするが、ひとたび「大丈夫だ」と判断すれば恐れることなく攻めて行く。新手に驚きながらも慌てることなく的確に対処し、僅差で相手の玉の首を掻き切ることだけを狙って脇目も振らない。その緩急が光った。

 広瀬は早い段階で藤井陣の奥深く「2八」に歩を打っていた。その後、この筋への藤井の攻撃を歩で止めることは禁じ手の「二歩」になってしまうためできず、香車などで止めるしかなかったのも響いたようだ。

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