「確かな安心」のある相互扶助の社会をつくる ――永島英器(明治安田生命保険相互会社取締役 代表執行役社長 )【佐藤優の頂上対決】

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自分を守るために

佐藤 いま保険への関心は、Z世代を中心に非常に高まっていると思います。特に女性たちです。彼女たちの一つの節目は35歳だそうです。結婚するかしないかという選択もありますが、もう一つ、その年齢ではマンションを買うかどうかという選択を迫られるんですね。

永島 ローンを考えると、そのあたりで決めようということでしょうか。

佐藤 そうです。その彼女たちを駆り立てているのは、自分の身は自分で守らなくてはいけないという意識です。こうした自己防衛や自己責任の考え方は、日本が新自由主義的な政策を取り始めた30年くらい前に始まったと思いますが、個人に浸透するまでにはタイムラグがあって、いま非常に高まっているように見えます。

永島 新自由主義や少子高齢化、そしてコロナ禍によっても格差や分断が拡大し、一方で地球温暖化はどんどん進んでいます。こんな状態では人類も地球もどうなるのかと、不安を抱えてしまうのはよくわかります。その意味では、私たちは今、時代の大きな転換点に立っていると思います。

佐藤 その不安は保険にも表れていますね。一昔前までの生命保険は、病気や事故で死亡したり働けなくなったりした時、路頭に迷った家族が暮らしていけるようにするものでした。もちろん今もその部分が最重要だと思いますが、自身の健康維持の側面がどんどん強くなっています。

永島 弊社でも2019年に健康増進型保険「ベストスタイル 健康キャッシュバック」の販売を開始しました。万が一病気になった時の保障に加えて、健康増進の取り組みを応援する保険です。具体的には、健康診断の結果に応じて、毎年、保険料のキャッシュバックがあります。

佐藤 これはどのくらい広まっていますか。

永島 これまでの販売件数が累計100万件を突破し、キャッシュバックのお支払いも97億円に達しています。

佐藤 それは大きな数字です。時代の要請に応えた保険になっている。

永島 私どもの根本にあるのは、一人ひとりの幸せや安心を相互扶助の理念で何とか持続可能たらしめることです。そうするには死亡時や入院時の保障だけでなく、普段から健康増進のお手伝いをしたり、健康診断を受けていただくよう促し、病気にならないよう予防することが重要です。望ましい行動を取れるように働きかけることを「ナッジ」と言いますが、それを保険の仕組みの中に入れていく。健康増進の試みとしては、Jリーグの選手とのウオーキング大会も各地で行っています。

佐藤 Jリーグへの協賛も続けられていますね。

永島 「明治安田生命Jリーグ」は今年で8年になります。

佐藤 この対談にも出ていただいた、前チェアマン、村井満氏は浦和高校時代の同級生です。

永島 存じております。私も村井さんとは非常に仲良くさせていただいて、佐藤さんのお話もうかがっておりました。

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