防衛費5.4兆円→11兆円で増税の不安 荻原博子さんは「所得は倍増どころか、半減するかもしれません」

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「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」から報告書を受けた岸田文雄首相は11月28日、防衛費を2027年度にGDPの2%程度に増額するよう鈴木俊一財務相と浜田靖一防衛相に指示した。財源をどう確保するかが今後の課題となるが、SNS上では所得税を上げられるのは困るという声が多数出ている。

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 ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮の度重なるミサイル発射、そして台湾有事……。日本の安全を脅かす周辺国が増えているため、世論も防衛費増額に傾きつつある。とはいえ、そのための大幅な増税が必要と言われると、話が違ってくる。

「まずは、防衛費を増額して具体的に何に使うのか、国民に示して欲しいですね」

 と解説するのは、経済ジャーナリストの荻原博子氏。

「陸上配備型迎撃ミサイルシステム『イージス・アショア』が2020年に配備中止となって、イージス・システム取得費など277億円が無駄になりました。ドブに捨てたようなものです。また、アメリカでは危険な航空機とされ、『未亡人製造機』とまで言われたオスプレイをいまだに配備している。こんなムダづかいしたままの増額はやめるべきです」

税収は過去最高

 日本の防衛費は、GDPの約1%に当たる約5兆4000万円(2022年度)。これを5年後の2027年度にNATO基準となるGDPの2%にまで増額すると、約11兆円となる。そのためには大幅な増税が必要との見方もあるが……。

「いえ、私に言わせればすでに大増税時代に突入しています。今年度の税収見込みは過去最高となる65兆2000億円です。バブル期の1990年度(60兆1000億円)を大きく上回っているのです。今年度で最も大きな税収は消費税で、21兆6000億円となっています。物価が高騰した分、消費税収が増えたのです。国民にとっては、実質的な増税といってもいいと思います」

 さらに、来年10月から導入されるインボイス制度が増税の布石になるという。インボイス制度は、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額などを伝える制度だ。

「2019年10月に消費税が10%に引き上げられた際、食品などは8%の軽減税率が適用されました。2つの税率があって計算が面倒でしたが、インボイス制度を導入すれば事務手続きが簡単になり、新たな税率を作ることも可能になります。ヨーロッパでは、ヨットなどの贅沢品の消費税は20%です。日本も贅沢品には消費税を15%にすることが容易にできます」

 加えて、軽減税率も見直される可能性があるという。

「軽減税率を廃止して、食品も一律10%になることも十分考えられます。今後増税に向けて、あらゆる手段をうってくるでしょう」

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