インバウンド解禁で聖地ドンキは「コロナ前の4割近く回復」も… 頼みの“爆買い中国人”に一抹の不安

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 コロナ禍による入国規制が10月11日に大幅に緩和されて以降、各地で外国人旅行客の姿を見かけるようになった。第8波など予断を許さない状況ではあるものの、年末年始にかけてさらなる増加が見込まれる。そんなインバウンド消費の現在を取材した。

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 コロナ以前、訪日外国人から絶大な支持を得ていたのがディスカウントストアのドン・キホーテである。今回のインバウンド解禁にあたっても、免税レジを増やしたり外国語のポップを復活させるなどの事前準備を行っていた。

 運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、解禁からおよそ1カ月の現状を次のように話す。

「東京と福岡の店舗では、コロナ前の2019年の4割弱まで売上が回復してきました。特に渋谷の店舗でこの傾向が顕著です。免税売上データを見ますと、最も多いのが韓国のお客様です。福岡の店舗の復調はアクセスの良さが要因かもしれません。次いで台湾、欧米、そしてタイや東南アジアの国々からご来店いただいております」

 コロナ以前には大阪や札幌の店舗もインバウンド需要が大きかったが、こちらは「19年比で3割前後の回復」とのこと。関西国際空港や新千歳空港の国際線の本格的な再開がまだなど、就航の影響もあるようだが、解消されるのは時間の問題といえるだろう。

「売れ筋商品としましては、まず医薬品。栄養剤や湿布薬、胃腸薬などですね。ほかに日焼け止めやお土産用のお菓子も売れます。コロナ前と比べて大きな変化はありません。日本製ではありませんが、お土産を入れて帰る用途として、海外ブランドのスーツケースも売れています」

 円安がインバウンド復調の一助となっている可能性もありそうだ。

“お得意様”は戻るのか

 マーケティングアナリストの渡辺広明氏はインバウンドをめぐる“期待と不安”を次のように語る。

「渋谷の店舗が好調とのことですが、10月のハロウィーンで渋谷を視察した際も、外国人の姿を多く見かけました。時間帯によっては日本人より仮装している割合が多かったほどです。独自に進化した日本のハロウィーンが面白がられていることもありますが、渋谷が日本を象徴する観光スポットになっているのを強く感じました。さながらスクランブル交差点がNYのタイムズスクエア、といったところでしょうか。都市部である渋谷への集客により力を入れることで、周辺の街の購買行動にも繋がるはずです。僻地の観光地とはまた違った、効果的なインバウンドの形となるのでは」

 一方、現状ではかつてのような爆買い中国人の姿は見かけない。「ゼロコロナ政策」を敷く中国政府の渡航制限が続いているためだ。コロナ前2019年の約3188万人の訪日外国人数のうち、約959万人が中国からだった。約3割を占めていた“お得意様”の戻りがインバウンドの行方を左右するわけだが、渡辺氏は、

「将来的には規制が緩和され、中国人訪日客も戻ってくることでしょう。ただその際に、コロナ前のように日本製品を積極的に購入してくれるかという点は疑問です。先日の『独身の日』にも変化がありましたから」

 という。

 独身の日こと11月11日にはネット通販を中心に中国内で大セールが行われる。2009年に大手ECサイトのアリババが始めた企画で、シングルを意味する「1」が並ぶことからその名前がついた。

「今年もゼロコロナ政策の反動やネット通販の定着によって、総取引額は1兆元(約20兆円)前後にのぼったと見られています。日本のコンビニ業界の市場規模が7.6兆円ですから、いかに大きな額が動くイベントかが分かると思います。中国政府がIT企業を規制している影響で、正確な取引額の公表は各社自粛しているのですが……」

 それだけ影響力が大きいキャンペーンということだが、

「もともと独身者が自分への『ご褒美』を買う日という意味合いが強かったのですが、現在では日常使いの化粧品や洗剤、シャンプーなどを安くまとめ買いする機会となっています。欧米商品と同様、日本製品の人気は根強いようなのですが、最近は中国の通販で国内メーカーの台頭が目立つのです」

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