羽生善治、52歳での快進撃の理由は? AIの“実験”が功を奏し「何かをつかみかけている」

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「明らかに何かをつかみかけている」

 もっとも羽生の復活は環境の変化によるものだけではなく、自己変革もあった。

「数年前、羽生さんは自分自身を評して、“現代将棋にきちんと対応できていない。どんどん変化していく戦術にマッチできていない。AIの影響を強く受けた新たな戦術をつかみ切れていない”と話していました」

 と羽生に10年以上取材を続けるルポライターの高川武将氏が言う。

「しかし今年の成績を見るに、明らかに何かをつかみかけているのではないかと思います。例えば、羽生さんは基本は飛車を振らない『居飛車党』ですが、昨季は6局も『振り飛車』を採用しています。これはAIの評価が低い戦術で負けも込み、羽生さん自身“失敗でした”と笑っていましたが、そうした反省を生かしているのでは」

「AIの発想や思考プロセスそのものを理解しようとしている」

 今季も“実験”は続き、

「全27局のうち『横歩取り』という作戦を12局も採用しています。これもAIによる評価は低いですが、あえて選択している」

 全盛を誇るAIへのリスクを取ったチャレンジが、逆に好結果を生んでいると分析するのだ。

「普通の棋士は、AIが示す答えのみを暗記し、目先の勝利だけを求めているような気がします」

 と高川氏が続ける。

「しかし羽生さんを見ると時をかけ、AIの発想や思考プロセスそのものを理解しようとしているように見えます。これまでの経験から得た“美意識”や“定跡”を捨て、AIに果敢に挑んできた。真理探究の歩みを止めようとしませんね」

 王将挑戦が決まると、迎え撃つのは藤井五冠。彼に勝ってタイトル100期の新たな伝説なるか。

週刊新潮 2022年11月24日号掲載

ワイド特集「善悪の彼岸」より

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