米中間選挙で存在感を示したZ世代 暗号資産FTX崩壊で大打撃

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 11月8日に行われた米国の中間選挙で番狂わせが起こった。

 事前の予想に反して、シンボルカラーが赤である共和党の圧勝を意味する「赤い波」が起きなかった。

 起きると予想されていた赤い波を阻止したのは若者の力だった。

 米タフツ大学によれば、若者(18~29歳)の27%が投票に出かけ、過去30年間の中間選挙の投票率としては2018年の31%に次いで高かった。若者の投票は圧倒的に民主党に集まった。各種の出口調査は一様に「若者の6割以上が民主党に票を投じた」と伝えている。

 1997年から2012年までに生まれた世代は「Z世代」と呼ばれ、注目されることが多い。生まれた時に既にインターネットが普及しており、前の世代と価値観やライフスタイルが大きく異なっているからだ。

 今回の中間選挙の争点はインフレ対策だとされていたが、Z世代の最大の関心事は人工妊娠中絶の権利だったと言われている。前回の大統領選挙の結果を認めない「選挙否定派」が多数を占める共和党に対し「自らの投票行動を否定する存在だ」と反発し、民主党に票を投じたZ世代が多数いたこともわかっている。

 フロリダ州ではZ世代初の下院議員(25歳)が誕生しており、Z世代は今回の中間選挙でその存在感を大きく示した形だ。

 このように、Z世代は民主・共和両党にとって「真剣に対応すべき有権者」になったわけだが、彼らにとっても最大の関心事は自らの懐事情だ。

半数以上が退職後の蓄えナシに

 Z世代の間で争点の1つに「学生ローンの免除」が挙がっていたが、米国では来年から学生ローンの利払いが約3年ぶりに再開される予定だ。新型コロナの経済対策の一環で、連邦学生ローンの利払いは2020年3月以降猶予されてきたが、来年1月からその措置が失効する。経済が減速する中、多くのZ世代にとって「弱り目に祟り目」だ。

 米国では成人すると親と別居するのが一般的だったが、経済的に恵まれないZ世代は、成人しても半数以上が親と同居している。

 Z世代にとっては数十年先の話かもしれないが、老後の生活も気になるところだ。

 今年1月に発表された米国勢調査局の報告によれば、退職年齢となる55歳から66歳までの米国人の49%が退職後に備えた個人的な貯金をまったく持っていなかった(2017年時点)が、Z世代が退職を迎える頃、この状況がさらに悪化する可能性が高い。

 ボストン大学の著名な経済学者であるローレンス・コトリコフ氏は「Z世代とミレニアル世代(1981年から1990年代半ばまでに生まれた世代)の半数以上が金銭的な蓄えがない状況で退職生活に入る可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

 米国において「老後の備え」と言えば、401k(確定拠出型の個人年金制度の一種)だ。現在、株式や債券での運用が一般的だが、若者の投資の対象は変わってきている。

 米国の大手資産運用会社の調査によれば、Z世代とミレニアル世代の4割以上が既に暗号資産に投資しており、Z世代とミレニアル世代の約半数が暗号資産が401kの運用対象になることを希望している。

 幼い頃からコンピュータに慣れ親しんできたZ世代は、ゲーム感覚で暗号資産に投資していると言われているが、投資家保護のルールが整備されていない暗号資産市場では「全財産を失うほどの損失を出すリスクがある」と危惧されていた。

 残念ながら、この悪い予感が見事に的中してしまった。

 暗号資産取引所を運営するFTXトレーディングは11月11日、米連邦破産法第11条の適用を申請し、経営破綻したからだ。

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