米中間選挙で存在感を示したZ世代 暗号資産FTX崩壊で大打撃
泣き面に蜂
FTXは2019年に創業し、創設者で前CEOのバンクマンフリード氏(30歳)はピーク時に260億ドルの資産を保有していた。同氏は「若きカリスマ」として注目され、暗号資産業界の信頼を代表する「アイコン」のような存在となっていた。
ソフトバンクの孫会長が初期の大口の投資家となり、大谷翔平選手や大坂なおみ選手がアンバサダー(公式に広告・普及活動を行う人物)になっていたことから、日本でもFTXの知名度は高かった。
だが、状況は一変した。一夜にして数十億ドルもの資産が消失したことから、「暗号資産市場のリーマンショック」と呼ばれるようになっている。リーマンショックの破綻の場合、残っていた実物資産が顧客の救済に充てられたが、FTXに残っているのは流動性が低く、ほとんど無価値の暗号資産ばかりだという。破綻したFTXの債権者は100万人を超え、大半は個人顧客だが、Z世代などデジタル世代がその中心にいるのは間違いないだろう(大谷・大坂両選手も「賠償責任がある」と提訴される事態となっている)。
今年5月にも取り付け騒ぎが起きた暗号資産市場にとって、FTXの破綻はダメ押しとなった感が強く、「暗号資産は冬の時代となった」との嘆き節が聞こえてくる。
南カリフォルニア大学の調査結果によれば、パンデミックの影響で米国の若年成人は前の世代に比べて性格が「内向き」になり、神経症的な傾向が強まったという。「泣き面に蜂」ではないが、その上、将来の希望を託していた暗号資産が「水の泡」と消えてしまったら、その傾向は強まるばかりだ。
今後の米国政治を主導していくZ世代のこのような精神状態が、液状化する国際社会をますます不安定にしてしまうのではないだろうか。
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