妻の不倫を知り、36歳夫は“浅はかな方法”で復讐 「卑怯ね」と言い放たれたその後の夫婦関係は

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妻は「居場所がないからここにいるだけ」

 私はこの日、奏汰さんと居酒屋で話をした。帰宅するのはたぶん22時頃になるだろう。こういうときは、妻はすでに娘と一緒に寝ていることが多いらしい。

「僕は帰宅して洗濯機を回して、少しテレビでも観て風呂入って寝る。そんな感じですね。娘が大きくなるころには、どういう関係になっているのかなと思うこともあります」

 妻からも夫からも、離婚という言葉は一度も出ていない。心がすれ違っているのを自覚しながらも、実はお互いを求めているのではないだろうか。

「僕はそうですが、妻はそうは思ってないんじゃないかなあ。他に居場所がないからここにいるだけ、娘を育てることが自分の仕事と割り切っているようにも見える。ただ、いつも思うんですよ。僕はとても寂しい。彼女は寂しくないのかな、と」

 聞いているだけでせつなくなってくるような話だ。紗依里さんが悪いと今さら責めても意味がない。どんなに親しくても、他人の心のうちを勝手に見ることも理解することもできないのだ。わかってほしい、わかりたいと相互の思いが一致して初めて、人は人をほんの少しだけ理解できるものかもしれない。その根本的なところがこれほどずれていたら、この先が不安に感じられるのも当然だろう。

 いつも心が重たい。いつになったらすっきりするのだろうと思うものの、すっきりできる日など来ないのかもしれない。奏汰さんはそう言って、足を引きずるように去って行った。

 ***

 “高嶺の花”との幸せな家庭生活から一転、奏汰さんの人生には暗雲が立ち込めてしまっている。パートナー選びを間違えたと言ってしまえば簡単だが、娘がいる以上、自分のことだけを考えてリセットすることもできない。

 奏汰さんはどう振舞えばよかったのだろうか。広い心で紗依里さんのすべてを受け入れればよかったのか、それとも “妻として不適格”と判断し、早々に関係を清算すればよかったのだろうか。生後数か月の幼子を放置していた事から察するに、紗依里さんは案外簡単に子供を手放し、父娘ふたりでやっていけたのではないか。

 だが、そのどちらも選べず、奏汰さんは事実上崩壊している家庭生活を5年続けている。いまも妻を「美人」と評する彼は、おそらく、心のどこかで紗依里さんを諦めることができないのだろう。

 奏汰さんのこの先は紗依里さんの手に握られてしまっている。が、彼女が何を考えているのか原稿から読み取ることは難しい。亀山氏は「実はお互いを求めているのでは」と推察しているが、もし、仮にふたたび裏切られるような真似をされたら、そのとき奏汰さんはどうするのだろうか。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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