世界はインフレなのに…中国でデフレリスクが台頭しているのはなぜ

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 中国で生産財の価格が下落している。

 11月9日に発表された10月の卸売物価指数(PPI)は前年同月に比べて1.3%下落し、2020年12月以来1年10ヶ月ぶりのマイナスになった。

 長年デフレに苦しんできた日本でさえ、世界的な資源インフレなどの影響で10月の企業物価指数(PPIに相当)は9.1%上昇している状況をかんがみれば、中国のPPIの下落は注目に値する。

 PPIのうち、産業構造の川上や川中にあたる生産財は2.5%の下落となった。鉄鋼が21%、非鉄金属は8%低下し、9月からの下落幅が拡大した。9月まで上昇していた肥料など化学原料やゴム・プラスチック製品も下落に転じた。

 生産財の部門でデフレリスクが台頭しているのは、不動産市場の不調が長引いているからだ。中国の民間調査会社によれば、国内100都市の住宅価格及び住宅販売は10月も低迷が続いている。

 そのせいで設備投資全般が不振となり、生産財の部門は苦境にあえいでいる。

高級マンションのたたき売り

 不動産市場の不調は資産デフレという悪弊も引き起こしている。

 中国で最も不動産価格が高いとされている上海では高級マンションのたたき売りが起きており、競売市場で最低入札価格「20円」で売り出されるケースも散見されているという(11月11日付ダイヤモンドオンライン)。

 中国の民間シンクタンクが11月8日に公表した「中国富豪ランキング2022年版」は「超富裕層の総資産額が過去20年間で最大の減少となった」と指摘している。

 ゼロコロナ政策に起因する景気の低迷も家計の節約志向を強めている。

 10月の中国の消費者物価指数(CPI)は2.1%上がったが、主因は食肉消費の6割を占める豚肉の価格高騰だ。CPIがマイナスに転じるのは時間の問題だろう。

 中国のデフレリスクの原因は不動産市場の不調だと言っても過言ではない。なぜ中国の不動産市場の不調が続いているのだろうか。

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