ドラフトで「コネ採用」? なぜ、アマ時代に全く活躍していない選手が指名されるのか

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いきなり名前を呼ばれる“意外な選手”

 今年のドラフト会議から約3週間が経った。筆者は、デイリー新潮で、会議直後に「ドラフトで何が起きた? 上位候補選手が“指名漏れ”や“下位指名”となった裏事情」(10月22日配信)という記事を執筆したが、指名漏れとなった選手の代表格といえる山田健太(立教大)は、社会人野球の強豪、日本生命への入社が濃厚とも報じられている。そのほか、悔し涙を呑んだ選手も、プロの世界を目指して、動き出している。しかし、その一方で、事前には高く評価するような報道はなく、当日いきなり名前を呼ばれる“意外な指名”が存在している。【西尾典文/野球ライター】

 その多くは球団が独自で行っている入団テストによって発掘される選手だ。今年は、日本でプレー経験のない山口アタル(テキサス大タイラー校中退→日本ハム育成3位)が入団テスト経由で指名を受けた。ただ、入団テスト以外からも“意外な選手”の名前はドラフト会議で呼ばれることがある。今年でいえば、是沢涼輔(法政大→西武育成4位)がそれに当たる。

 是沢は高校時代、群馬の強豪校・健大高崎でプレーしていたものの、レギュラーではなく、3年夏は「背番号12」で、2試合の代打出場に終わっている。その後、法政大に進むも、3年秋までは一度もリーグ戦に出場していない。4年間の通算成績は、4試合の出場で3打数0安打という結果だ

 この数字を見ても、育成ドラフトとはいえ、是沢が指名されると予想していた人は少なかっただろう。西武が指名した理由は、現在二軍でプレーしている捕手に故障が相次いでいるほか、是沢の練習態度が担当スカウトの目に留まったとのことだ。

“表には出しづらい話”

 筆者は、以前、日本ハムの元GMで、現在はスカウト部の顧問を務める、山田正雄氏から選手の普段の姿を知るために、所属チームには伝えずに陰から練習を見るのが好きだという話を聞いたことがあるが、試合以外での姿を評価するケースもあるようだ。

 この話だけを聞くと、選手の努力が評価された“美しい話”に聞こえるかもしれない。だが、中にはなかなか“表には出しづらい話”が絡むことがある。

 近年、不可解さを感じる代表的な指名が、2020年にオリックスから育成6位で指名された古長拓(福島レッドホープス)である。

 九州国際大付では2年春に控え選手として甲子園に出場。卒業後は九州共立大に進学したが中退し、社会人のクラブチームである東北マークスを経て、19年から独立リーグでプレーした。とはいえ、独立リーグで活躍していたわけではなく、ドラフト指名された20年の成績は、36試合に出場して9安打、打率.155に終わっている。

 さらに、当時26歳という年齢を考えると、育成ドラフトとはいえ指名するのは明らかに不可解だった。オリックス側は古長の指名について、福島レッドホープスの岩村明憲監督(元ヤクルトなど)と対立して干されていたことを逆にガッツがあるととらえ、こうした選手が欲しかったという旨のコメントを出していた。

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