ドラフトで「コネ採用」? なぜ、アマ時代に全く活躍していない選手が指名されるのか

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プレー以外の“何かしらの事情”

 だが、この理由に納得したファンは少なかった。現場のスカウトも当然マークしていたわけではなく、オリックスの担当スカウトは、ドラフト前に突然決められたと漏らしていたという。

 結局、古長はわずか1年で自由契約となり退団。二軍で11試合に出場して8打数1安打という数字が残っているが、成績と年齢を考えても、野球のプレー以外の“何かしらの事情”が働いていた可能性は高い。

 また、古長ほど極端ではないものの、昨年、ソフトバンクから5位で指名を受けた大竹風雅(東北福祉大)の指名もまた、長年ドラフトを取材している筆者にとって、理解しがたいものだった。

 リーグ戦での通算成績は2試合、2回に投げたのみで、最終学年は1試合も公式戦に登板していない。オープン戦では、力のあるボールを投げており、高い将来性を評価していた球団は他にもあったとのことだが、育成ではなく支配下での指名を予想していた球団はなかったはずだ。

 関係者を総合すると、ソフトバンクのスカウトが東北福祉大との繋がりが強かったことに加えて、大竹の親族とも古くから親しく、その縁もあって、支配下で指名されたとされている。

 ちなみに、大竹は入団直後の今年4月に右肘の手術を受けた影響で、二軍でも登板がなく、オフには早々に自由契約となり、育成選手としての再契約が打診された(10月22日時点)。こうした現状を見ても、大竹をわざわざ支配下で指名する必要性は高くなかったと言わざるを得ない。

球団関係者から“強い推薦”も

 選手を発掘するのは主に各球団の担当スカウトだが、中には“別ルート”から話が出てくることがある。そして、担当スカウトが推していない選手が指名されることが少なからずある。

 関東地区担当スカウトが言う。

「選手が指名されると、最近は『誰が担当スカウトなのか』ということまで紹介されますけど、全員が全員、その担当が強く推した選手というわけではありません。あまり強く推していなくても、チーム事情から意外に高く“評価されてしまう”ということもよくあります。“指名あいさつ”の時に、担当スカウトの表情を見てみると、よく分かると思いますよ(笑)。それに以前ほどではないようですが、球団の関係者から“強い推薦”があって指名対象となるケースもありますね。そういう選手でも、便宜的に担当スカウトは必要になってきます。推していない選手がプロで活躍しなかったからといって、担当スカウトの責任のように見られるのは辛いですよね……。いろんな事情はあると思いますが、“実力以外の力”が働くこともあることは確かです」

 人間性の部分が評価されるというのはあって然るべきだが、実力の世界と言われながら、“実力以外の要素”がプロ入りに影響する「コネ指名」のような事例は、ファンにとっても選手自身にとっても不幸なことではないだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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