「アニメ大全」開始から約2カ月 当初は“エヴァがない”と批判され…担当者が苦労を語る

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手塚治虫の思いをうけて

――そもそもアニメ大全はどのような経緯で制作されたのでしょうか。

 日本でアニメーションが制作されてから100年となる2017年、日本動画協会がアニメの力を過去・現在・未来につなげようと始めたプロジェクト『アニメNEXT_100』、その3つの柱となる企画の一つが「アニメ大全」です。

 手塚治虫先生は、1978年に出版された「日本アニメーション映画史」(掲載作品情報は、1977年まで)に寄せた文章の中で

《これだけのアニメ人口――プロ作家、技術者、それにテレビアニメしか興味のないアニメ・マニアまであわせるとおそらく莫大な数にのぼるだろうと思われる数の人達を――擁しながら、まとまった評論や紹介の書物がいまだ一冊も出ていないということは、どうも残念なはなしである(中略)かようにまとまりの難しい我国のアニメ界ではあるけれども、とにもかくに、そろそろ、各国の記事などにとりあげられたり、問い合わせを受けたりするような趨勢になったとあっては、何か、現状を分析し、要約した記載がほしく、紹介できる資料があれば幸いなのだがと思っていたところである》

 とおっしゃっているのですが、「日本アニメーション映画史」につづく同様の資料はありませんでした。そこで、「アニメ大全」により、作品の歴史を網羅することはとても重要だということで始まっています。

 ゲームでは立命館大学、漫画では国立国会図書館や明治大学、京都精華大学などが収集されています。アニメも研究しようという志をもった大学は増えていますが、アニメを専門に作品を収集しデータベース化しようというところがないことや困難なことが、「アニメ大全」を制作する理由の一つです。同時に、テレビのアニメの草創期から現在までを知り、こうしたデータベースを作るにふさわしい方々が現役でいる間に「アニメ大全」を作らないと、歴史を繋げられる人間がいなくなってしまうという切実な理由もありました。

英語対応、非営利運営に課題

――国や都が関わっているプロジェクトではないんですね。

 作品情報の蓄積という点では、東京国際アニメフェア(2002~)の時代からの蓄積や、文化庁メディア芸術データベースアーカイブ事業(2010~2014年)による蓄積という実績でご協力いただいてきました。「国の予算を受けてもこんなものか」という声もありましたが、2015年からスタートした現在の「アニメ大全」の運営は、残念ながら行政機関の予算は一切受けておりません。

――世界最大規模の日本のアニメのデータベースをうたっていますが、海外からの反応などはいかがでしょうか。

 公開当初3日間は、国内90%、海外10%、その後1週間で国内80%、海外20%程度の割合でした。現在は平均して国内80~85%、海外が15~20%のバランスです。当初は、EUが多く、次いで北米、アジア、現在は日によってアジア、北米、EUが入れ替わります。英語で検索できるようにして欲しいというご要望も多いのですが…。

 日本のアニメ研究をしている方々から、「ノンプロフィット(非営利)でずっと行くのであれば、海外の研究者の方々に協力要請をしてみたらどう」というアドバイスをいただきましたが今の運営を維持するだけでもかなりの費用がかかり、ノンプロフィットというのは厳しい。「アニメ大全」を持続可能なものにするために、どうするかは今後を見据えて考えていかなければなりません。

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。現在は退社し雑誌、ウェブで記事を執筆。個人ブログ「OUTCAST」も運営中。Twitter:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

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