「70歳を過ぎたら大学病院に行ってはいけない」その驚きの理由は? お年寄りにとって本当に必要な医師とは?

ドクター新潮 ライフ

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 高度な専門治療が受けられる。あらゆる担当科があり、いろいろな故障を一カ所で診てもらえるから便利。大学病院を信頼し、通院している高齢者は多い。しかし、老年医学の権威の和田秀樹氏は、高齢になったら大学病院に行くな、と断言する。その理由は――。

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 3年近く続くコロナ禍で一番被害に遭ったのは、私は高齢者だと思っています。最新の推計データで日本の人口の29.1%を占める65歳以上に、集中的にしわ寄せが及びました。残りの人生を楽しむ貴重な時間を奪われた、ということもあります。しかし、それ以上に問題なのは、高齢者の健康が損なわれたことです。

 ステイホームで家に閉じ込められ、頭も体も使わない生活を強いられているうちに、フレイル(虚弱)や要介護の状態になってしまったという例は、枚挙にいとまがありません。こうなったのは、感染症の専門家と称する医師たちが、新型コロナウイルスの感染者数を減らすことだけに注力し、感染対策の副作用を一切顧みなかったせいです。

 実は、このことは、日本の大学病院の弱点と重なる話なのです。

臓器別診療

 現在70代以上で、現役時代に大学病院にお世話になった方も、治療の結果に満足している方も、多いのではないでしょうか。そのうえ、ありとあらゆる担当科がある大学病院に行けば、複数の病院をはしごする必要がなく便利です。

 しかし、こと高齢者にとって、大学病院がベストな選択かというと、答えは必ずしもイエスではありません。その理由は、多くの大学病院で行われている「臓器別診療」にあります。順天堂大学病院など、総合診察が充実している大学病院もありますが、ほとんどの場合、臓器別に専門分化されています。

 わかりやすい例を挙げれば、いまの大学病院のほとんどに「内科」という科はなく、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科などに分かれています。「外科」も同様で、脳神経外科、呼吸器外科、乳腺外科などに細分化されています。

 臓器別診療は1970年代以降、各大学病院に浸透しました。理由は、そのほうが論文を書きやすいからだと思います。詳細な論文を多く残している人や、ある臓器に非常に詳しい人が評価されやすいのが大学です。たとえば循環器内科の人が循環器に関する論文を書く場合、ほかの臓器を見る必要はありませんし、極論すれば、動物の循環器でもいいわけです。

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