「70歳を過ぎたら大学病院に行ってはいけない」その驚きの理由は? お年寄りにとって本当に必要な医師とは?

ドクター新潮 ライフ

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専門外のことはできない医師たち

 こうして医師の専門化が進んだ病院では、消化器内科がさらに肝臓グループや消化管グループなどに分かれ、当然、肝臓グループの人は肝エコーに、消化管グループの人は胃カメラに精通しています。しかし、一方で、担当臓器に特化しすぎたあまり、消化器内科の医師なのに専門外の肝エコーはできない、あるいは胃カメラは扱えない、という医師が出てきかねません。

 それでも50代までの患者なら、臓器別の高度医療による治療は有効だと思います。多くの難病患者が、専門性の高い臓器別医療のおかげで命を長らえてきた、という事実もあります。

全身にガタがきている高齢者を診療しきれない

 しかし、高齢者にとっては、臓器別診療がいいとはいえません。なぜなら高齢者は一つの臓器だけでなく、複数の臓器にガタがきているのが普通だからです。たとえば、高血圧でコレステロール値が高く、糖尿病も抱えている、というケースも珍しくありません。

 その場合、循環器内科で降圧剤やコレステロール値を下げる薬を出され、内分泌・代謝内科では血糖値を下げる薬を処方される、ということになります。ところが高齢になるほど、薬を飲んだときの肝臓の代謝機能や、腎臓の濾過機能などは落ちてくるので、多剤服用による腎機能障害のリスクも高まってきます。

 これでは特定の臓器にとどまらず、全身にガタがきている高齢者を診療しきれません。臓器別診療は、薬の副作用や自分の専門外の臓器疾患などを見据えながら、患者の健康をトータルで考える、という診療になりにくいのです。

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