「夫のことが心底嫌になった」 家事の細部まで指示されて離婚を口にする38歳妻

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 新型コロナによって家族関係、人間関係がおかしくなったという例は少なくない。数多くの家族問題の相談に乗ってきた東京家族ラボの池内ひろ美さんのもとをこの日訪れたのは、夫のリモートワークをきっかけに、夫婦の関係性に疑問を抱くようになったという女性である。【SNS時代の家族問題/第7回】

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コロナ禍が気付かせてくれた

「コロナ禍にならなければ私が離婚を考えることなんて、ありえなかったでしょうね。コロナが気付かせてくれた感じです」

 口元は笑っているが、目は笑ってはいない38歳の女性は、結婚から10年が過ぎた今、初めて離婚したいのかも、という自分自身の気持ちに気付いたと語ります。

 細身で小柄な彼女はセミロングの黒髪を軽くまとめ、シルク混の淡い緑色のワンピースに白色のカーディガンを着て、ナチュラルメイクで清潔感のある、おとなしそうな印象の女性です。

 相談室に入ってごあいさつなさった時に、マスクを外したお顔を拝見することができました。鼻筋が通った小さな小鼻に、少し口を尖らせて話す口元もかわいらしい女性です。

 そういえば、初対面のあいさつでマスクを外すか否かは相談者側の意思にお任せしているため、クライアントがマスクを外せば私も外し、マスクを外さないまま着席するクライアントの場合は私もマスクを着けたままとしています。

 おとなしそうな彼女が、コロナ禍だからこそ離婚を考えたという理由は、原因は何でしょう。そもそも、コロナ禍の「禍」が持つ意味は、「災い」や「災難」、「不幸なできごと」ですが、彼女にはどんな災いが起こったというのでしょうか。

 コロナ感染しましたか?

「いえ、ちょっと熱があって体調が悪くて怪しいと警戒したことはありましたが、PCR検査を受けたら陰性でした」

 そうですか。

 じつは私(池内ひろ美)はコロナ感染し、10日間自宅待機した時期がありました。軽い発熱と倦怠感でしたが、後遺症の嗅覚異常には1カ月余り悩まされました。ワクチン2回接種直後のことでした。

 それを聞いた彼女は、何度かまばたきをしながら話します。マスク越しでは表情すべてを見ることができなくて少しもどかしい気持ちはしますが、エクステをしている長くて奇麗なまつ毛は印象的です。小さなまばたきを、何度か繰り返し話しはじめ、話の途中にもまばたきを繰り返し、小さなため息をつきながら、ゆっくり伝えてくれます。

「ワクチンを接種してもコロナ感染することがあるんですよね、そう、夫が騒いでいましたが、やはりそうなんですね。私もワクチン2回接種しています。接種のタイミングも夫の指示に従いました。でも、そうですよね。思いおこせば、結婚してからずっと、夫の指示に私が従ってきたような気がします」

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