「五輪汚職」に口を噤むスポーツ界 山下泰裕JOC会長、室伏広治スポーツ庁長官が今すぐすべきことは何か

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トップに取材しないメディア

 残念ながら、日本のスポーツ界はお金で支配されている。真剣にスポーツの未来を考え、スポーツとは何か、どうあるべきか、スポーツの意義を追求する立場の人間が中心になって、リーダーシップを執る体制ではない。

 それをわかっているからか、メディアも今回の事件に関するコメントを伊藤会長に求めていない。政界で何か不正があれば、トップである首相に取材が及ぶのは当然。だが、誰もスポーツ界のトップに取材しない。つまりトップであってトップでない、とメディアも認識しているからだろう。ならば本当のトップは誰なのか? 誰が日本のスポーツ界の舵取りをしているのか? その姿が見えないところに、高橋元理事のような怪しい存在の暗躍を許す土壌がある、と見る事もできるだろう。

 そんな中、我々がリーダーと認識できる存在が山下泰裕JOC会長であり、室伏広治スポーツ庁長官だが、彼らもまた昼行燈のような発言と行動を繰り返し、政財界の操り人形にしか見えないのがスポーツ人のひとりとして悔しくてたまらない。

 なぜ行動しないのか。山下会長も室伏長官もなぜスポーツの未来を真剣に考え、現状を打開する使命感に燃えて発言しないのか? 政財界の支配があってそれができないのか、あるいは真面目に考えていないのか? 疑惑が広がる状況下で、相変わらず札幌冬季五輪招致に加担する意味が、一般の国民にはまったく理解できないだろう。

包み隠さず語る

 スポーツに携わる者なら大半が、忸怩たる思いで何らかの解決策と未来への提言を持っているはずだ。多くの知恵があり、切実な要求がある。だが、それを結集しようとする姿勢はない。ここにも、日本のスポーツ界の悲しい現実が浮き彫りになって見える。

 山下泰裕会長の話を聞いても、室伏広治長官の話を聞いても、スポーツ界の全容はまったく見えない。それは一体、何を意味するのか? 日本スポーツ協会の伊藤会長も含め、今回の贈収賄事件が起こる温床や前提を積極的に語らない。それこそ無責任だし、責任回避だし、隠蔽体質そのものではないだろうか。

 世間では、「東京2020調査委員会」を立ち上げるべきだとの指摘がある。検察の捜査と並行して、法律に触れる・触れないの尺度だけでなく、オリンピック実施の問題点やそこから浮かび上がる将来像を日本独自に検証・提言する試みは重要だと思う。だが、それ以前にやれることはある。先に挙げた3人が、包み隠さず、「なぜ発言しなかったのか」「できない縛りがあるのか」「贈収賄事件が起こる温床は何か」について、包み隠さず語ればいい。語るべきだ。メディアもそれを尋ねるべきだ。「追及」では喋りづらいだろう。彼らから、明日に向けた「告白」をしてもらう。それが重要だと私は考えている。

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