里見香奈女流五冠が棋士編入試験に失敗 名棋士「米長」の格言を地で行った3人の若い試験官

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「女性初の棋士」を目指した将棋の里見香奈女流五冠(30)。彼女が挑んだ「棋士編入試験五番勝負」の第3局が、10月13日、関西将棋会館(大阪市福島区)で行われ、里見は103手で試験官の狩山幹生四段(20)に敗北した。8月18日の第1局から3敗を喫した里見は、編入試験不合格となった。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

里見は残り2分で投了

“出雲のイナズマ”の閃光は、3人の試験官を打ち倒せなかった。再挑戦も目指せるが、里見は「今はない」と否定した。

 対局開始は10時。「新人プロ」の狩山は、木村義雄(1905〜1986)、大山康晴(1923〜1992)、中原誠(75=引退)、谷川浩司(60)の4人の永世名人の掛け軸が垂れ下がる、最上の対局室の「上座」に遠慮がちに座った。

 ABEMAで解説を担当した今泉健司五段(49)は、編入試験の経験者でもある。今泉は「立会人の福崎(文吾)九段は、僕が受けた時の第1局目の立会人だったんですよ」と幸先よさそうな巡り合わせに、気合十分で解説に臨んでいた。

 初戦から2連敗と「カド番」だった里見は後手番。5筋の歩を突き出し、予想通り得意の「ゴキゲン中飛車」。2筋の歩を進めることを誘うような狩山の手にも落ち着いて対応し、AI評価値も中盤までは里見がやや優勢の模様だった。しかし、狩山は独特の受けを見せる差し回しで里見の飛車を奪い、次第に攻勢に転じる。

 里見が9筋の歩を成り込んで攻めて行ったあたりから、急にAIの評価値も下がった。持ち時間は各3時間だが、里見の消費時間が大きく、銀で王手をされた里見が残り2分で投了した時点で、勝った狩山は1時間以上を残していた。

異例の会見

 まだ3局目だが、里見が敗れれば編入試験は終わってしまうので、負けた時だけ彼女の記者会見が開かれることになっていた。

 感想戦を終えた里見が会見に姿を見せた。

「中終盤のねじり合いで読み負けている部分があったが、大きな舞台での敗戦で成長できると思っているので、今後の糧にしたい」と話し、全3局の試験の感想を聞かれると「中終盤で読み負けている部分があり、実力不足だった。悔しい気持ちもあるが、受け入れてこれからの糧にしたい」などと話した。

 里見は最近、女流の棋戦などと合わせて対局が殺人的に立て込んでいたが、それを問われると「確かに対局が多いのは間違いない」としながらも「どういう状況でも変わらず普段の力を発揮できないと本当の強さじゃない」と話し、敗れた言い訳にはしなかった。

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