「神の子」田中将大、ワースト黒星で「普通の子」に 復活には楽天残留より「巨人移籍」の荒療治

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「負けて不平不満ではツキに見放される」

 プロ野球楽天の田中将大投手(33)の新人時代、その勝ち運の強さに、当時の野村克也監督が「マー君、神の子、不思議な子」と表現した。その名言通り、2013年には24勝0敗と神懸かり的な成績で、球団史上初の日本一に貢献。しかし、日本球界復帰2年目の今季はMLBを含め自己ワーストタイの12敗(9勝)を喫した。パ・リーグの投手で最多黒星でもあり、規定投球回数に到達したリーグ9投手のうち、防御率3.31は8位。4勝9敗の昨季に続き、2年連続で負け越し、かつての“神通力”は消え去った。

 今オフ、楽天とは2年契約が切れる。ゼネラルマネジャー(GM)を兼ねる石井一久監督は慰留する方針だが、残留なら年俸9億円からの大幅ダウンは必至か。楽天復帰時はMLB再挑戦に含みを持たせていたものの、現状の力量と高年齢がネックで現実的ではない。日米通算200勝があと10勝に迫る中、国内他球団への移籍で再出発を図ることを勧める声も聞こえる。

 11敗目を喫した9月24日の本拠地でのオリックス戦だった。プレーボール前は激しい雨で、一回表の投球練習前にマウンドに土が入れられ、待機。開始が予定より5分遅れた中で一回に2失点を喫した。一回裏には予報通りに雨はほぼやんだだけに、思わず恨み節が口をついた。

 これに対し、元NPB球団監督は苦言を呈す。

「田中が言う通り、確かにほんの少し、開始を遅らせればもう少し集中して試合に入れたとは思う。失点はなかったかもしれない。『すごくアンフェア』と言った気持ちはよく分かる。だが、それも勝っていればこそ説得力がある。負けて不平不満ではツキに見放される。こういうことは言わないタイプだった」
 
 10月2日のホームでの今季最終戦でも5回3失点で負け投手になり、2桁勝利には届かなかった。ここ一番での勝負強さは影を潜め、オリックスの劇的な逆転優勝の引き立て役に回った。

「去年は味方の若い打者が田中の名前に萎縮し、勝たせないといけないと力んで援護できなかった。だから勝ち星は少なくても内容はさほど悪くなかった。一方で今季はそうではない。パ・リーグは特に投高打低が顕著だから、余計に内容の悪さが際立つ。『神の子』は『普通の子』になってしまった」(同)

松坂の現役晩年にダブる衰え

 田中は被本塁打がリーグワースト3位の16本に上った。ピンチでギアを上げ、鬼気迫る投球で打者をねじ伏せた全盛期の姿はない。

「ストレートは150キロ以上出ても球速ほど切れがない。メジャー仕込みのツーシームやカットボールの、打者の手元で動く球で打ち取ろうしていたが、直球に怖さがなく、今の打者は動くボールに慣れているため、簡単に対応されてしまう。しかも田中の全盛期を知る打者が減っており、名前負けすることもない」(前出の元監督)

 さらに元監督は、ダルビッシュ有(パドレス)と松坂大輔を比較しながら、田中が今後直面する苦難を予想する。

「ダルは36歳になった今も強いストレートを投げられている。だから多彩な変化球も生きている。今季は16勝(日米通算188勝)で田中より早く200勝する勢いがある。田中の衰えは大輔に重なる。若い時は本格派だったが、肘の手術後は手元で動くボールでかわす投球になった大輔と同じ道を行くようなことにならなければいいのだが…」

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