ロシア女性にハメられた? 日本人外交官の「スパイ疑惑映像」をプロパガンダに利用する“窮地のプーチン”

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「罪」を認めた男性

「ロシアの法律を違反することをわかっていますか」

 うなずきながら「いまわかりました」と答える男性。男性の背後にある窓には、顔は見えないが別の男性が写り込んでいて、圧をかけるようにして立っている。再び女性が、

「ロシアの内部の情報とか、情報をもらったことがわかりますか」

 と畳みかけると、男性はあきらめきった表情で淡々とこう答えた。

「あのー、えーっと、いまはわかりました」

 この1分弱の動画が、いまロシアのニュース番組では繰り返し流されている。FSBが摘発した日本人外交官スパイ「タツノリ・モトキ」による犯行の「決定的証拠」として報じられているのである。

目隠しをされて連行された

 9月27日、ロシアはこの日本人領事を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定し48時間以内の国外退去を通告したと発表した。一方、林外務大臣は「ロシア側の行為は領事関係に関するウィーン条約および日ソ領事条約への明確かつ重大な違反」と猛抗議している。

 領事は本当にスパイ行為を働いていたのだろうか。外務省関係者は「でっちあげの可能性が高い」と指摘する。

「戦争が起きているこの状況下で、日本の外交官がリスクを冒して映画に出てくるようなスパイ活動をするわけがない。現地では、領事が受け取った書類にロシアとアジア太平洋地域の他国との協力関係や、西側諸国が科した制裁のロシア極東・沿海地方への影響に関する機密情報が含まれていたと報道されていますが、極めて怪しい。ロシアでは公然の情報を調査しただけでも、『スパイ』に仕立て上げられることが日常茶飯事だからです。金銭と引き換えだったとも伝えられているが、単に食事代をおごっただけなのかもしれない。女性がFSBの囮捜査官で、ハメられてしまった可能性も十分考えられます」

 “罪”を認める供述をしている点については、

「領事は拘束後、日本総領事館や本省に連絡を取れないようにスマートフォンを取り上げられたばかりか、目隠しされ、両手と頭を押さえつけられた身動きがとれない状態で連行されたと本省に報告しています。尋問の際には、取調官に髪を掴まれ威圧されたとも。罪を認めない限り釈放してくれなかったのでしょう」(同)

 動画で領事が見せていた微妙な表情には、ちゃんと理由があったのである。

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