ガストは100店閉鎖の苦境 低価格だけではないサイゼリヤに敗れた本当の理由

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 ガストなど100店舗が閉店──衝撃のニュースは大きく報じられた。すかいらーくホールディングス(HD)は8月12日、海外を含め展開している3085店のうち、不採算店舗の約100店を順次閉店すると発表したのだ。

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 コロナ禍に物価高が加わり、地方店で売上が伸び悩んでいるのが原因、と同社は説明した。担当記者が言う。

「すかいらーくHDは新型コロナが猛威を振るった2020年にも約200店の閉店を発表しています。コロナの軽症化もあり、グループ全体だと客足は戻っているのです。しかし原材料費と光熱費の高騰が水を差した格好になりました。更に、地方では出費を抑える動きが急速に拡がっています。具体的には東北、北関東、中国、四国、九州のロードサイド店で来客数が減少したと発表しています」

 ちなみに、すかいらーくHDが運営しているチェーン店で代表的なものはガスト、バーミヤン、しゃぶ葉、夢庵、ジョナサン、から好し──と多岐にわたる。

「今回の閉店はガストとステーキガストが中心になると見られています。同社の記者会見で、業績回復には『値上げ以外に手の打ちようがない』という見解も示されました。既にガストでは7月、平均5%の値上げが行われましたが、次回は東京の山手線圏内の店舗で“超都心価格”が設定されると報じられています(註1)」

「値上げしてはダメ」

 すかいらーくHDは8月、今年12月期の通期業績予想について、純損益を40億円の黒字から20億円の赤字に下方修正した。まだまだ苦境は続くというわけだ。

 一方、好対照の動きを見せているのがサイゼリヤだ。7月13日に発表された「2022年8月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」によると、売上高は1073億4600万円、営業利益は10億6100万円、経常利益は100億800万円だった。

「今年6月、サイゼリヤ創業者の正垣泰彦会長(76)がNewsPicksのインタビューに応じ、『いまは絶対に値上げしてはダメ』と発言、大きな反響を呼びました。7月に行われた決算会見でも、更にコストカットを推し進めることで、同業他社の値上げに価格据え置きで対抗する姿勢を鮮明にしました」(同・記者)

 すかいらーくHDは店舗を削減するが、サイゼリヤは店舗を増やす方針だという。ただし、東洋経済ONLINEの報道によると、厨房機器の不足などで計画に少なからぬ狂いが出ているようだ(註2)。

 両社の明暗は決して小さくない。なぜこれほどの差が生まれてしまったのか、フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏に取材を依頼した。

「70年代、80年代にすかいらーくがファミリーレストラン発展の礎をつくったということを、改めて確認しておく必要があると思います。流れを振り返ると、まず1970年、すかいらーくの1号店が東京都府中市にオープンしました。“帝国ホテルの洋食を3分の1の価格で提供する”という経営戦略は見事に当たり、破竹の快進撃が始まりました」

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