異次元の円安だが「ドル預金」が危険な理由 資産防衛のために何ができる?

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的外れなコロナ対策も問題

 ところが、政府は日銀に丸投げして、あとは知らんぷり。異次元な状態を放置した。せめて円安を利用し、なんらかの施策を打ち出せないものか。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が言う。

「異常な円高を放置したために、生産拠点が海外に移ってしまい、多くの分野で国内自給率が下がったからこその円安です。生産拠点の国内回帰を図る、経済安全保障を考えて中国にあるアメリカ企業の生産拠点を日本に誘致する、といった施策が望ましいです。あるいは原発を再稼働させてエネルギー自給率を高める。農地法を改正して企業を農業に進出させ、食料自給率を高める。それに水際対策を緩和してインバウンドを自由にすれば、円の需要が高まって円安が是正されると思う。しかし、そうしたことができていません」

 そして、そもそも、的外れなコロナ対策も円安を助長した一因だと指摘する。

「日本はコロナ対応において、世界に完全に遅れています。欧米ではマスクを外して日常生活を取り戻しているのに、日本はワクチン接種も遅れ、水際対策も後ろ向きで、それも円安の一因でしょう。もっとインバウンドが来れば、円の需要は高まりますから」

消費者に何ができる?

 元JPモルガン東京支店長の藤巻健史氏は、円安の原因をこう説明する。

「現在の世界的インフレの原因は、お金を刷りすぎているから。それに気付いた欧米諸国の中央銀行は、お金を吸収しはじめています。一方、日本銀行は国債を購入し続けないと、国は国債を完売できずにデフォルト(債務不履行)を起こしてしまいます。そこで日銀は国債を買い、購入金をバラまき続けざるをえないのです。このスタンスの違いが次のステップでの円安ドル高につながり、円はさらに暴落すると思います」

 さらなる円安とは恐ろしい。だから「円に対して強い海外資産を買おう」という声も上がるが、永濱氏はそれに警鐘を鳴らす。

「いずれドル高はピークアウトし、次にはドル安になるとすれば、いまドルを買うと高値づかみしてしまう可能性があるので、下手に動かないほうがいい」

 異常な円安も長くない、と考えたほうが心は健康でいられるかもしれない。ともあれ、意固地な日銀と無策な政府の間で追い込まれたわれわれは、どうすべきか。永濱氏が提案する。

「一般には物価が上がると、みな購買意欲が高まって早く買おうとし、景気は過熱に向かいますが、日本の場合、デフレマインドが染みついていて節約してしまう。結果、購入を控えたばかりに高値づかみすることがあるので、買いたいモノがある人は、急いで買ったほうがいいです。そうしてみんなが買い物をして経済が戻れば、日銀も利上げできるかもしれません。また、スマホの通信料を払いすぎている人が多いので、積極的に見直す。電気やガスの契約を見直す。スマホのアプリを使えるなら、フリマ(フリーマーケット)アプリを使って、不要なものを売って必要なものを安く買う、という手もあります」

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