異次元の円安だが「ドル預金」が危険な理由 資産防衛のために何ができる?

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円安メリットが受けられない

 その影響は、本来なら悪いことばかりではないという。「輸出が有利になる、インバウンドを誘致しやすくなる」(上野氏)というメリットもあるからだが、

「いまはコロナの水際対策もあって、円安メリットを受けづらい状況です。一方、円安のデメリットとしては、輸入企業のコスト増加や消費者の購買力低下が挙げられます。ただ、いまの状況は国際的な資源高が影響していて、その点は円安と別に考えるべきですが、それでも、海外での資源価格の上昇という負の影響を、円安が増幅しているとはいえます。そして、これだけ急激に円安が進むと、プラスの影響を受ける人とマイナスの影響を受ける人との格差が広がって、後者の痛みは大きくなります。マイナスの影響を受けるのは、輸入企業のほか、海外資産を多く持っている特殊な方を除いた一般の消費者。賃金上昇率よりも物価上昇率のほうが高く、購買力が実質的に低下し、負の影響が強まっていると思います」

 気になる物価の見通しだが、上野氏は、

「生鮮食品を除く物価上昇率は、7月が前年比2.4%。しかしこれまでの価格上昇分で、特に食品の輸入価格が相当上がっており、国内価格への転嫁が進んで年内に3%に達するでしょう」

 という見通しを示す。そして、この急激で異常な円安をもたらした元凶が、日銀の黒田東彦総裁が主導し、もう9年間も続く「異次元緩和」であることは、衆目の一致するところである。

異次元すぎる金融緩和

 異次元緩和とはごく簡単に言えば、大量の資金供給と超低金利という劇薬のような金融政策。それがわれわれ一般消費者にどんな影響を与えているか。評論家の大宅映子さんの話に、端的に映し出されている。

「私が結婚したころは、定期預金の利息は5%くらいありましたが、今の0.002%なんていう利息では、銀行に行く足代にもなりません。昔、コンサルティング会社にお勤めの方に、“大宅さん、1億貯めればなんとかなるよ”と言われましたが、1億貯めてもダメな時代になりました」

 というのは低金利政策の影響。がんばって資産を形成してもまったく利息が得られず、安心して暮らせない時代になってしまったわけだ。続いて円安の影響だが、大宅さんは物価の上昇ではすまない根源的な影響を見抜いている。

「物価が上がって大騒ぎしているのは、日本人が国際人でない証拠だと思います。円安傾向になったとき、普通の生活者からはほとんど文句が出ませんでした。もっと世界とつながる感覚があれば、海外に行けないし、輸入品も高くなる、と思っていいのに、物価が上昇して初めて慌てています。私もコロナ前は一家でハワイによく行きましたが、円安では難しい。“円安”ではなく“円弱”と言うべきです。円が強ければ多くのモノが買えますが、弱くなれば少ししか買えないのですから。バブルのころアメリカ人に“日本人は金持ちになったからって、ランチに2千円も払うなんて”と言われましたが、いまアメリカで、2千円ではランチを食べられません」

 恐ろしく衰退している日本の姿が浮かんでくる。

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