異次元の円安だが「ドル預金」が危険な理由 資産防衛のために何ができる?

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妥当な為替水準は1ドル110~120円

 ところが黒田総裁は意固地な姿勢で、計り知れないダメージを与えている。小幡准教授が続ける。

「日本が貿易黒字国だったのは遠い昔で、いまは大変な貿易赤字です。輸入品目の多くが原油などのエネルギー関連で、小麦など食料品が続き、いずれも必需品なので、値段が上がっても輸入せざるをえません。そもそも原油や小麦は国際的に価格が2倍程度になっていましたが、為替レートが極端に下がった結果、2倍で済むところを3倍支払っているのが現状です。しかし、それが2倍で済めば支払額が4兆円くらい減ります。その分が国民に還元されれば、(住民税非課税世帯に)5万円なんて配らなくていいし、5万円を配るための約1兆円の予算も要らなくなります。各家庭もガソリン代や電気代を年間10万円くらい節約でき、結果的に景気もよくなります」

 円高に傾くと景気が悪化したのは、日本が大きな貿易黒字を抱えていた大昔の話なのである。

「基本的に為替は妥当な水準で安定しているべきです。今回のように短期間に3割も動くと困りますし、1ドル140円は妥当な水準からかけ離れています。IMF(国際通貨基金)などの国際機関は、同じ物の値段は世界的に同じであるべきだという考え方で、それに基づいて購買力平価を算定すると、1ドル90~95円が妥当だとされています。ただ、貿易赤字が増えた日本は外国からモノを買う必要があるので、ドルの上昇と円の下落は、一定程度は仕方ない。それを加味しても、妥当な為替水準は1ドル110~120円といわれています。経済学的にいかなる考え方によっても説明できない過度な円安は、誰にとってもよくないです」

長期的には円高が理想的

 結局、「通貨は強いほうが長期的に国は富む」と小幡准教授は言う。

「円が強くなって国富が増えると、日本の経済規模が拡大します。円がドルに対して強くなれば、ドル換算額が増えて日本の国際的な影響力が高まり、日本企業による海外の企業の買収も可能になります。一方、このままどんどん円安に振れれば、日本の大企業が中国企業に買われることだってありえます。不動産も同様です。だから為替は妥当な水準で安定しているべきで、なおかつ長期的には円高方向に進んでこそ、国の経済力は増します」

 それでも黒田総裁は、異次元緩和にこだわり続けている。上野氏が指摘する。

「異次元緩和はこの9年、うまくいっていませんが、だからといってやめられないのです。目指していた賃上げを伴う物価上昇を実現できておらず、その意味で黒田総裁に責任はあるでしょう。しかし、そもそも日銀だけでは無理な話なのです。賃金を上げるには生産性を引き上げて企業の稼ぎを増やし、その状態を持続させて労働者にしっかり分配する、という仕組みが欠かせません。政府と企業、日銀が一丸となればできたかもしれません」

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