兜町の風雲児「中江滋樹」が語っていた田中角栄 「目白に3千万円持って行かせたが…」

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「吉原、赤坂、銀座」

「とりあえず九州に行ったけど、テレ朝の天皇と呼ばれて、世の中怖いもんなしの三浦の親父が“もう無理だ”って言うから、ダメかもしれねえと思ったよ。警視庁のトップにも電話したけど“いまさら迷惑だ”って言うから、海外に出たんだよ。自民党の連中も、しばらく海外に出てくれって。俺も籠池みたく国会に出るのは怖かったしさ。捜査当局も俺の弁護士通じて“しばらく帰国しないでくれ”って言うから、これ幸いと帰って来なかったんだよ。経済犯だから、ガサ入れして資料を分析して、確定してからしか逮捕しないって教えてもらっているから、余裕を持って行ってた」

 だから、海外で風雲児の延長を演じることもあり、

「現金は何千万円か持って逃げた。台湾に赤坂の料亭みたいなチューチャーっていうのがあって、一番高級な店はさ、女の子を連れだして1週間でも一緒に旅行できるんだよ。そこでハーフの子を気に入ってさ」

 だが、ガサ入れが行われ、夕刊の1面トップで報じられていると、フィリピンで聞かされたときは、

「がっくりきたよ、俺もさすがにね。クアラルンプールに行ったけど、あれだけ大事件になって胃がキリキリして、タクシーで移動中に“ちょっと止めてくれ”と言って、吐いちゃった」

 その後、ヨーロッパに移るが、“三浦の親父”の訃報に接し、帰国しないわけにはいかなかった。

「お通夜が終わって奥さんが、“もう家族だけですから”って、裏口から入れてくれた。2週間くらいして、俺の弁護士に捜査当局から電話が入ったわけ。まだ荷物の分析とか済んでないが、身の安全が心配だから任意で聞きたいと。で、警視庁の刑事2人と会って、東京近郊の温泉をグルグル回ってたんや。刑事に“俺は無罪でしょ”と答えたら、じゃあ話を聞いてもしょうがないねとなって、将棋指してた。ところが豊田商事の永野会長が殺されたじゃん。捜査当局は、中江の身の安全は守ったと世間に示したくて、殺された翌朝、急遽逮捕されたんだ」

 ときにひと晩で数千万円を遊興に費やしたという中江。当時の社員の育て方もこうだったという。

「募集で入ってきた営業マンに、最初は3万円、5万円、10万円という投資顧問料の営業をさせる。それを一発取るじゃん。そしたらそのお金で吉原コース、赤坂コース、銀座コースに連れてくわけよ。そのなかから“いやぁ、すげえ”って感動したヤツがトップセールスになっていくわけ」

 その一方で、

「俺は土地とかゴルフ会員権とかは、ほとんど買わないようにしていた」

 と中江は語るが、続くバブルの“盛期”には、紳士たちの事情も変化する。

デイリー新潮編集部

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