衝撃!智弁和歌山「ドラフト有力候補」、プロを拒否して米国大留学へ…新たな潮流になるか

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最速149キロを誇る大型右腕

 プロ野球のドラフト会議まであと約1ヵ月となり、各球団の動向が気になる時期となってきたが、ここへ来て気になるニュースが飛び込んできた。2年連続で夏の甲子園にも出場し、高校生の有力候補の1人と見られていた武元一輝(智弁和歌山)が米国の大学への留学を目指して、メジャーのスカウトが集うイベントに参加していたことが分かったのだ。【西尾典文/野球ライター】

 武元はプロ志望届を提出したものの、これはイベントに参加するために必要と判断した高校野球連盟から指導を受けたものとのことで、来月20日のドラフト会議では、NPB球団の指名を受けても断る見通しだと見られている。武元は最速149キロを誇る大型右腕で、打者としての能力も高く、日本のプロ入りを志望すればドラフト指名の可能性は高かっただけに、衝撃を受けた関係者やファンも多かったのではないだろうか。

 日本のアマチュア選手が、日本のプロ野球を経由せずにメジャー入りを目指して渡米することはそこまで珍しいことではない。NPB関係者は、以下のように話す。

「最初にメジャーの球団から日本のアマチュア選手に対して問い合わせがあり、実際に渡米したのは30年近く前にもあったと聞いています。ただ当時はドラフトの対象になるようなレベルの選手ではなく、大きな話題にもなりませんでした。初めてドラフト候補と言われる選手に対してメジャー球団からアプローチがあったのは、1997年に高校3年生だった後松重栄(大曲工→レッドソックスマイナー)が最初ですね。その後も多くの選手が米国へ行きましたが、ほとんどがドラフト候補という選手ではなく、そこからメジャーまで上り詰めたのはマック鈴木(元マリナーズなど)だけです。社会人では1位指名が確実だった田沢純一(元レッドソックスなど・今年ENEOSに復帰)がメジャーでも成功しましたが、そのクラスの選手が続くことは今のところなかったですね」

生活面の違いが大きい

 菊池雄星(西武→マリナーズ)と大谷翔平(日本ハム→エンゼルス)も当初は高校から直接メジャー入りを目指していたが、最終的にはドラフト1位でNPB球団に入団して、実績を残してから海を渡っている。

 大谷を説得するために日本ハムが作成した資料にもNPBでの実績がない選手がいかにメジャーで成功する確率が低いかというデータが示されており、そのことが日本ハムに入団する決め手の1つになったとも言われている。

 では、成功例が少ない原因はどこにあるのだろうか。ある球団のスカウトは、次のように解説してくれた。

「野球についてももちろんですが、それ以外の生活面の部分が大きいんじゃないですかね。言葉も通じない、生活環境や練習環境も違う。日本では、指導者の指示に従って野球だけをしていればよかった選手が、そんな中で結果を残すというのはやはり簡単ではないと思います。日本のプロ野球で結果を残しても、こうした面で、メジャーで苦労する選手は多いですからね。あと、メジャー球団へ入団と言ってもマイナー契約で、その条件も良いものではありません。海を渡るときに少し話題になっても、そのまま人知れず、帰国していたということが大半だと思いますね」

 これを考えると、菊池や大谷は、日本ハムが作成した資料にもあるように、賢明な判断だったと言えそうだ。しかし、今回の武元がこれまでの選手と違うのは、高校から直接メジャー球団と契約するのではなく、将来のメジャー入りを視野に入れながらも、あくまでも米国の大学への留学を目指すという点だ。

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