「初恋の悪魔」「家庭教師のトラコ」 大物脚本家のドラマはなぜ数字が取れなくなったのか

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織田裕二と大げんか

「やはり作品の評価が高いため、ソフト化しても売れるし、配信でも見られるという2次収入が見込めるからでしょう。それに若い頃は数字を取りましたから。代表作は何といっても91年の『東京ラブストーリー』(フジ)でしょう。平均視聴率は22・9%、最終回は32・3%を記録し、トレンディドラマの火付け役とされ、この作品を機に放送枠が“月9”と呼ばれるようになったとも言われています。鈴木保奈美と織田裕二の主演で、鈴木が演じる奔放なリカが、『カーンチ、セックスしよ!』とカンチ役の織田に言ったシーンを覚えている人も多いと思います。もっとも、この台詞は柴門ふみさんの原作にもあったのですが」

 坂元氏のオリジナルではなかったのか。

「後に坂元さんが語ったインタビューによると、この台詞は使いたくなかったそうです。しかし、プロデューサーの大多亮さん(現・フジテレビ常務)に『絶対入れろ』と命じられて、仕方なく入れたそうです」

 当時、20代前半だった坂元氏もプロデューサーには逆らえなかったわけだ。

「ところが今や坂元さんも大御所です。08年の『太陽と海の教室』(フジ)では、主演の織田裕二が脚本の台詞をバンバン変えたことが原因でケンカになったほど。プロデューサーも坂元さんには何も言えなくなってしまい、作品に手を加えることなどできなくなっているのです」

視聴率40・0%!

 一方、水曜ドラマ「家庭教師のトラコ」は遊川和彦氏(66)の脚本である。橋本愛が合格率100%の実績を誇る家庭教師を演じているのだが、その家庭教師は無愛想でコスプレ好き。授業の日には家庭に宿泊し、何を教育したいのか分からない謎の多いキャラだ。

「ドラマが始まってすぐ、遊川さんの過去の作品である、05年の『女王の教室』(日テレ、主演:天海祐希)や11年の『家政婦のミタ』(同、主演:松嶋菜々子)に似ていると指摘する声が上がりました。たしかに両方をミックスさせたようなキャラ設定ですが、大きく異なるのは視聴率です。当時PTAから苦情が殺到したほど社会現象化した『女王の教室』は平均17・3%、最終回は25・3%を記録しました。『家政婦のミタ』は平均24・7%、最終回はなんと40・0%で、連ドラ単回の歴代高視聴率の第3位に君臨しています」

 ちなみに、歴代高視聴率の第1位は13年の「半沢直樹」(TBS)の最終回で42・2%。第2位は00年の「ビューティフルライフ」(フジ)の最終回で41・3%である。

「対して、今期の『トラコ』は、7月20日の初回7・5%が現在までの最高で、2話は7・0%、その後はほとんどが5%台です。遊川脚本のドラマは、最終回に向けて右肩上がりに数字が上がって行くのが特徴でした。『女王の教室』は初回14・4%だったのが、最終回は約11ポイントプラスの25・3%。『家政夫のミタ』は初回19・5%に対し、最終回は20ポイント以上プラスされました。しかし、近年の作品には、それが顕著に現れることが少なくなっています」

 こちらもプロデューサーが口を挟めなくなっているのだろうか。

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